EP 71
人間の本質は顔に出る。たくさんの事業を手がけてきたフレディには、相手がどのような人間かを顔で見分けることが出来るようになっている。
確かに壱花の顔には、ひねくれた部分や嫌味な部分はない。善良。それがすべてを物語っている。
思い返せば、さっきも必死になって、レイラのことを庇っていた。下手すぎる英語でも一生懸命に。
そして、舞に諌められ、また弟ハリーの悲しそうな表情も目に焼きついてしまった。
フレディの中で何かが変わった。
「……わかった、わかったよ。降参だ。ジェインの結婚を認めよう。もう邪魔をすることもしないし、女性を紹介するのもやめたよ。これだけのジェインの執着を見れば、どんな手段もどうせ徒労に終わるだろうからな」
ジェインと壱花が顔を見合わせた。
「ありがとう! 伯父さん!」
「ありがとうございます!」
「壱花! これで俺たち、晴れて本当の夫婦だよ!」
「はい!」
嬉しそうに顔を見合わせ、手を取り合って喜んでいる。見守り、微笑む家族たち。その姿を見て、フレディの胸の辺りを温かさが包み込むような感覚があった。
家族。
「……私が見落としていた幸せとは、こういうことなのか」
ため息ひとつとフレディの呟き。
「だがもう遅い……」
「全然遅くありません! 人生100年時代です!」
壱花のちょっと風変わりな応援の仕方に、100年も生きられるかアホらしいと思いつつも、いつしか自然と口元は緩んでいた。
✳︎
「伯父さん、ちょっとこれを見て欲しいんだ」
デザートも食べ終わり、食後のコーヒーも飲み終わった頃、ジェインが大きなカバンから額縁を取り出した。フレディへと渡す。
「これは……」
フレディはそれをまじまじと見た。
それは、壱花が描いたジェインの似顔絵。ステンドグラスからこぼれる陽の光を浴びた、ジェインの横顔、その姿。
唸った。
「……上手いな」
そして、もう一枚を渡す。前回のイギリスのパーティーでのレイラ。ドレスを着飾って、微笑んでいるレイラが描かれていて、思わず息を飲んだ。
美しかった。
「……舞に……舞に似ているな」
そして最後に。
「これも見てくれる?」
ジェインが大切そうに渡す。




