EP 67
「伯父さん、ここのスタッフに失礼な態度を取らないでくれないか。取り敢えず、席に着いてください」
ジェインが無表情で、にじり寄る。そのジェインの顔から、並々ならぬ覚悟を見て取ったのか、大人しく会場へと入っていった。
「ジェイン、お前の結婚の候補者選びのパーティーだと、招待状には書いてあったが? いったい、その候補者とやらはどこにいるのだ」
「伯父さんはそうでも言わなきゃ、来てくれないでしょう?」
ジェインに促されて行ってみると、そこには。
先に通されて着席している面々がいる。
「あっっ……」
その顔ぶれを見て、フレディは足を止めた。いや、止めただけでなく、そのまま後ずさっていく。
「ど、どうし、て。どういうことだ、なぜ……、き、君がここにいる、……?」
冷徹の塊でもあるフレディが、動揺を隠せない。これほどまでに顔色を変えた伯父を見たことがなかった。
(そうなのか、恋というものはこれほどまでに……)
ジェインはフレディの肩に手を置いた。
「俺の結婚のお祝いの席ですから当たり前ですよ。さあ、伯父さんの席はこちらです」
促しながら、イスを引き、半ば強引に席に座らせた。
席順はこうだ。
もちろん、正面には主役の二人、ジェインと壱花。ジェイン側に、伯父フレディとその隣にはレイラ。そして、壱花側には、ジェインの父ハリー、そして、その隣には。
「お久しぶりね、フレディ」
微笑みを浮かべながら頭を下げたのは、ジェインの母、舞。
「お元気そうで良かったわ」
「あ、ああ。この通り、げ、元気だよ」
「フレディ、マーガレットがお亡くなりになった時、不躾にもお葬式に伺わずに、本当に申し訳なかったわ」
「いや、それは……妻が、そう言って……」
弱々しい、消え入りそうな声だった。
フレディは数年前、妻のマーガレットを病気で亡くしている。が、本人の希望もあって、ひっそりと家族葬が行われた。
彼女の自分の葬儀に関する遺言には、『草壁 舞 グランヴィルを葬儀に呼ばないで欲しい』この一点のみ。知っていたのだ。夫の恋心を。




