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EP 62

ぽつっと弥一の口から言葉が溢れた。

「あんなに弱々しくていつもびくびくしてて、俺の言うことはなんでも、はいはいって聞いてたのに」

「あらまあ、モラハラ彼氏ってやつだったんですね。弥一さん、意外とオラオラ系なんですね」

「俺はもうそういうのやめたんだよ! なんだよ、杏だってきっつい性格してるよな」

「私は昔も今も変わりません。これが私ですから」

「はあ〜あ、口では敵わないな」

「でも、」

駅へと消えていく壱花を見送ると、杏が先に歩き出した。弥一も同じ方向、横に並んでいく。

「そういう、俺についてこいって感じ、悪くないですよ」

「あっそう」

そして、地下鉄への階段を二人、降りていった。

✳︎

「ジェインさん……」

さっきからぎゅっと抱き締められていて、洋服を着替えることもできていない。

「壱花、帰ってきてくれてありがとう」

「もう心配やわだかまりはないかい?」

「寂しくて死んじゃいそうだったよ」

抱き締められたまま、玄関へと押し込まれ、矢継ぎ早に耳元に囁いてくる。

壱花は、耳元がこそばゆくなり、身体をぐいっと離した。

「ジェインさん。すみませんが、まずはお風呂に入らせてください! 臭いますから!」

洋服はレイラから借りていて、お風呂も入らせてもらってはいるが、なんとなく自分が臭いような気がした。

ばっと離れて、ジェインが弱った顔を見せる。

「俺? 臭い? ごめん! 今すぐお風呂にお湯を張ってくるよ!」

ぴゅーんと風呂場へと直行していった。浴槽はすでに掃除してある。スイッチだけを入れた。

「壱花ちゃんが入った後で、俺も入るから! ごめんね、臭くて!」

「違います! 私が臭いんです!」

「なに言ってるの! 壱花ちゃんは臭くない! 良い匂いしかしない!」

訳の分からないやり取りが続きそうだったので、壱花もぴゅーんと洗面所へと走った。

ジェインが背後でそわそわしているのがわかる。

自分が帰ってきて、よほど安堵したのだろうかと、そう思うだけで顔が緩む。

大変な三日間だった。怒涛と言ってもいい。レイラの家に滞在する間、色々なことをたくさん考えた。そして、考えたこと思ったことを弥一と杏に、話をした。あんな風に強く自分の意見を主張し、話をするのは苦手だった。けれど、ジェインのことだけを考えれば、ここで強くなるしかないと思った。これ以上、話を拗らせてしまって、ジェインを傷つけたくなかったからだ。

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