EP 60
興奮し、激昂しているのもわかる。
罵倒され、その音にビクッとなった壱花を見ていられなくて、弥一が助け舟を出した。
「おい、杏! 言い過ぎだぞ!」
「あんたは誰の味方なのよっ!」
「お、俺はもちろん……」
「弥一さんは、壱花さんのこと大好きだもんね。ちょうど良いじゃない。交換しましょうよ。弥一さんはあなた、ジェインは私」
「ジェインさんは私を好きだって言ってました」
「そんなのその場しのぎの嘘に決まってるじゃない? あの夜だって、ジェインは何もないって言ってたけど、私たち、あのオフィスで抱き合ったんだから」
「…………」
「愛し合ってるの。セックスだってしてる。だから邪魔しないで」
ムカッときたのか、弥一が壱花をかばった。
「だったら、なんでジェインさんは壱花と結婚したんだよ。あんたと愛し合ってるなら、あんたと結婚すりゃ良かったじゃねえか。そんなの筋が通らないだろう? 」
「…………」
次には杏がむうっと黙ってしまう。
「ジェインさんはあの夜、杏さんとは話をしただけだって言ってました。防犯カメラを見ても良いって。今から見に行こう、確認してくれて構わないって、言ってくれました」
「だからなによ!」
「私はジェインさんを信じます」
そして、弥一へと向き直り、言った。
「やっちゃん、あの日は取り乱しちゃって本当にごめんなさい。ちゃんとあの時直ぐに確認すれば、こんなことにならなかったのに、私が体調を崩しちゃったから……」
「壱花は悪くないよ。俺が全部悪いんだから。俺が巻いた種だ、だから気にしないでくれ」
「私、契約結婚、嬉しかったんです」
その言葉を聞いて、弥一と杏、二人の表情が一気に翳った。
「それでも良いって思えたのは、ジェインさんが真剣に考えてくれたことだから。伯父さまが勧める女性は本当に綺麗で、頭も良くって、私なんてとうてい敵わないけど……」
一気に喋って疲れたのか、ふうっと息をつく。
「でも、私が良いって言い続けてくれているんです。ジェインさんは私に自信を持って良いって、出会った頃からずっと言い続けてくれているんです。だから私、イラストでも仕事でも頑張れたんです。ジェインさんは私の恩人なんです」




