EP 48
しんと空気が冷えた。このままではらちがあかないと、レイラが進言する。
「キミの言い分はよくわかったから。でもね、大切なのは壱花ちゃんの気持ちでしょ? それを尊重する気持ちはあるの?」
「もちろんある」
「だったら、壱花ちゃんに冷静になって考える時間をあげて。今日は解放してあげて」
レイラの説得にようやく弥一は抱えていた壱花の肩をそろりと離した。壱花はよろとよろけながらも、レイラが伸ばす両手を取った。
「……レイラさん」
涙。嗚咽。すべてが負。
「壱花ちゃん、なんかよくわかってないけど、辛かったね」
抱き締めて撫でる。その二人の様子を複雑な目で見ていた残りの三人は、それぞれ大人しく帰路に着いた。そして、レイラが乗ってきて待たせてあったタクシーに二人、乗車する。
「まずはうちに行きましょう」
レイラが行き先を告げると、やはり壱花は睡魔に襲われて、レイラの肩に頭を預けて眠ってしまった。
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「壱花、迎えにきたよ」
レイラが住むマンションの一室、ドアホンの向こうにはジェインが立っていた。金曜日の昼間。仕事を休んでレイラの部屋に留まっていた壱花だったが、こんな仕事中の時間に誰かが訪ねてくるとは思いもよらず、ボサボサの頭で出迎えることとなった。
「ジェインさん……」
ガチャとドアを開けると、そこにはスーツ姿のジェインが。
その途端、「壱花、相変わらず君は鳥の巣ちゃんだね」
ジェインは腕を伸ばし、壱花の髪を手櫛で整えた。
「お仕事は……どうしたんですか?」
弱々しい声しか出なかった。というのも、昨晩の修羅場から泣き続けていて、声も掠れていた。
「こんな時に仕事なんて手につかないよ。壱花が辛い思いをしているんじゃないかって、気が気じゃなかったからね」
そう言って靴を脱いだ。姉の家。勝手知ったるで、中へと入った。
「壱花ちゃん、今、話できそう?」
「……はい」




