EP 47
「レイラ、こんな遅い時間に悪かったな」
ジェインが苦虫を噛み潰したような顔で、実の兄を迎え入れた。薄手のハーフコートに身を包み、9センチのピンヒールをカツカツと鳴らしながらやってきたレイラは、弥一に抱きしめられている壱花を見、そして弥一、杏をそれぞれに見た。
「いいのよ、可愛い弟のためだもの。それにしても杏ちゃん、久しぶり。元気そうね」
杏は澄まし顔で、「レイもお元気そうで。ちょっとビックリしていますけど」と返す。
「まあね! 私も色々あったのよー。それにしてもこれ、修羅場だってことだけはわかるから、壱花ちゃんはいったん、私が預かるわ。壱花ちゃん、歩ける?」
「れ、レイラさん……」
ふらとふらつきながら、壱花は弥一から離れようとした。けれど、弥一は壱花を離さなかった。くんと肩を引っ張られる。弥一の睨みが増した。
「あんた誰なんだ」
「怖あ、今にも噛みつかれそうな顔〜。私はジェインの姉よ」
「誰が来ようとも、壱花は俺が連れていくから横からしゃしゃんなよ。誰も邪魔すんな!」
「キミもずいぶんと混乱してそうね。今日のところは私に任せてくれない?」
腕組みをして、首を斜めに傾け、態度で弥一を宥めようとする。そして、ジェインがその後を追った。
「和田くん、壱花を離してくれ。今日のところはレイラに任せて、頭を冷やすんだ。そうじゃなければ、今ここで警察を呼ぶ。警察署での話し合いになるだろうが、俺はその覚悟はできているからな」
「こらこら、こっちは収めようとしてんのにぃ。ジェイン、あんた余計な威嚇すんじゃないよ」
けれど、その言葉に返したのは杏だ。
「弥一さん、いったんは壱花さんをレイにお任せしましょう。仮とはいえジェインと壱花さんは夫婦なんですから、弥一さんの方が分が悪いですよ。それにこんなところで警察沙汰ともなれば、ここにいるみんなのキャリアに傷がつくことになるわ」
「俺は構わない! 俺は傷ついたって傷つけられたって、壱花が手に入るのならなんだってする!」




