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EP 44

ひっくひっくと身体が小刻みに揺れる。

「大丈夫だよ、壱花、」

「嫌だ、嫌だよう」

「壱花、大丈夫。きっとそんなんじゃないから。あの人がそんなことするわけないもんな。壱花のこと、すっげ大事にしてるし。見ててわかるよ。あの人、壱花のことすっげえ愛してるの。だから、なんかの間違いだから。大丈夫。ただの思い出話だよ、」

必死になって語り続けた。

それはなにより、自分の不義が壱花をこんな風にしてしまったから。

壱花は今、浮気のフラッシュバックに襲われている。

(お、俺の時も、こんな風に苦しんで……俺が壱花を……俺が、)

自分の浅はかな過ちから、こんなにも壱花を深く傷つけていたという事実に、相当へこんでしまった。

夜空を見上げる。星は相変わらず、自分は関係ないと言うがごとく、チカチカと瞬いている。その輝きは美しいはずなのに、美しく見えないのは、やはり自分が汚れているからだろうか。

鼻を少し啜った。

「なあ、壱花。俺たちもう、ダメなんかなあ。俺、もうおまえには嫌われちゃってるからさ、こんなこと言うのもおかしいって思うかもしれないけど。俺、壱花が結婚して、ああもう終わりだ、終わりなんだって思ったら、もう色んなことがどーでも良くなって。諦めようと、彼女とか作ったりもしたんだけどさ」

がたがたと震える壱花をもっともっとと強く抱き締めた。頭を撫でて、髪を優しく梳く。

「今さら何言ってんだって感じだけど俺だって……俺だって壱花と結婚したいよ。それでさ、家族になって子どもとかできたら服とか二人で選んでさ。きっと楽しいよ。壱花の子どもならめっちゃ可愛いし。可愛い奥さんに可愛い子どもたちかあ。俺、絶対めろめろになっちゃうだろうな。はは。なあ、壱花、俺じゃだめなのかな。幸せに……幸せにするから。絶対に悲しい思いなんて、もう二度とさせないと誓うから」

弥一は自分が言っていることが混乱している自覚があった。ジェインと上手くいき、壱花が幸せになりますようにという正当な気持ちと、反対に二人が上手くいかなくなって、自分のことを考えてくれないだろうかという邪な気持ちとが、ぐちゃぐちゃに混ざり合って、弥一の中で見事なマーブル模様を作っている。

混乱したまま、二人は長い時間、その場に座り込んだ。

✳︎

家に帰ると、いつものように壱花はベッドにいなかった。

「壱花ちゃん? どこにいるの? まだ起きてる?」

トントンとノックをし、壱花の部屋を覗く。電気をつけると、タブレットが開きっぱなしで、置いてあった。

「お風呂かな」

けれど、居ない。トイレ、もう一度ベッドルームと覗いたが、やはりどこにも見当たらなかった。

「え、買い物にでも行ったのかな……と、電話電話」

慌てて胸ポケットからスマホを取り出し、壱花の番号を呼び出す。

コールが10回ほど鳴ってから、はい、とスマホから声がした。

その声に、ジェインの背中にぞっと冷たいものが走った。少しの沈黙。そして。

「和田くん、壱花は? そこにいるの?」

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