EP 37
「わ、私もすごくすごく幸せです!」
杏の視線の圧に負けないように、強く主張した。
「まあ、とにかくだな。杏、壱花とも仲良くしてやってな」
ジェインの締めで、このバトルは終了だ。
「それと和田くん。君が誰と付き合おうが知ったこっちゃないが、俺の大切な人を泣かせるようなことだけはしないでくれ。まさか君がうちの担当者なのは誤算だったが、今回の仕事が一区切りつくまでは、よろしく頼むよ」
握手を交わした。
そして、弥一と杏が部屋を出る。壱花とすれ違うとき、弥一は眉を寄せ今にも泣きそうな顔で、壱花へと向かって顔を小刻みに横に振った。
まるで、違う、そうじゃないんだ、話を聞いてくれ、とでも言うように。
「失礼します」
「お疲れさまでした」
「ごくろうさまです」
いったん、ここで終了のゴングは鳴った。
(はあぁ終わった……)
壱花はぐったりとした身体を引きずりながら、ドアへと近づいた。けれど、先に腕を伸ばしたジェインがドアをさっと閉め、壱花の行く手を阻む。
鼻先でバタンと閉められたドアの前、後ろを振り返ろうとすると、そのまま背後からジェインに抱き締められて、心臓が飛び上がった。
「じぇ、ジェイン、さん……?」
はあああぁぁと深くため息をついたジェインは、回していた腕にぎゅっと力を込める。
「まさか和田くんが担当とはね。営業マンなんて他にもいっぱいいるのにな。あーあツイテナイ」
壱花はその腕にそっと手を添えた。
「私もびっくりしましたけど、私のことでしたら、もうやっちゃんは関係ありませんから」
「うん。わかってる」
「それに私たち、結婚しましたし」
「うん」
美人の幼馴染、杏を前にして私も心配です、という言葉はなんとか飲み込んだ。
「大丈夫ですよ」
「うん」
後ろから壱花の頬にちゅとキスをした。
そして、壱花を解放すると、ドアを勢いよく開け放ってから、「シバ! 今度、俺の壱花に、I love youなんて言ったら、減給だからな!」
わあっとオフィスが盛大に盛り上がった。
✳︎
「なんであんなこと言ったんだよ!」
「? 良いじゃないですか。本当のことなんだし」




