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EP 34

タブレットに目を落とす。姿勢を正して、イラストの続きを書き始めた。

「壱花、次はこの条件で一枚描いてくれるかな」

背後から声がした。

J-Planning、ITメンテナンス担当シバだ。

「はい。了解です」

イスごと振り返る。壱花が渡された書類を受け取ると、シバは近くにあった空席のイスをたぐり寄せ、背もたれを前に抱えるようにして座った。

「壱花、今ミーティングルームに入っていった二人って、誰なの?」

シバはインド人特有の太い眉を上下に動かしながら、目をしばたいている。どうやらそれはシバの癖のひとつのようだ。褐色の肌色、カーリーな黒髪。頭脳明晰で、性格は柔和。

「あの二人は、SOTの営業部の人たちだと思います。男性の方は和田 弥一さんで、女性の方は……私は知らない方ですが……」

「ああ! ジェインが前にいた会社だね。僕は日本に来て日が浅いからあんまり知らないけど、優良企業らしいね」

「はい。とても」

「女の子の方、カワイイな。すっごく僕の好み!」

「ふふふ、シバさん、この前来てた女性のこともそう言ってませんでした?」

「うん。でもあの子にはもうフラれちゃったんだ」

「告白したんですか? はやっっ」

「まあね。好きな人に好きって言うのはフツウだろ?」

「本能のままに生きてますね……」

わははと笑っていると、ミーティングルームのドアが開いた。中からぞろぞろとスタッフたちが出てくる。

「終わったみたいだね、やばい」

シバが慌てて立ち上がる。

「壱花とお喋りしてると、ジェインがムダに睨んでくるからな。じゃあ、それ頼んだよ」

苦笑しながら指をパチンと鳴らし、自分のデスクへと戻っていく。そして思い出したように振り返ると「そうだ壱花、昨日は僕の代わりにドラッグストアに行って胃薬を買ってきてくれてありがとうね! 壱花の看病のおかげで胃痛が治ったよ!」

それに呼応し「シバさん、当分ブラックコーヒーはお預けですよ!」と、壱花も。

「YES、壱花! I will do as you say! I love you!!」

すると、あちらこちらからヒューヒューと口笛が飛んで、壱花は頬を赤らめてしまった。

そんな中、「壱花! ちょっとおいで!」とジェインに呼ばれ、さすさすと赤くなった頬をさすりながら、壱花はミーティングルームへと向かう。開け放たれたドアから覗き込むと、そこには弥一と女性がまだ残っていて、ジェインを交えて三人で立っていた。

どきっとしたし、しかも嫌な予感までする。

「し、失礼します」

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