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EP 33

(あ、れ? もしかして、やっちゃん?)

集中していた画面から目を離し、少し離れた場所にあるミーティングルームの前に立っている男性を見て、壱花はどきりと胸を鳴らした。

草壁ジェインが立ち上げた新会社『J-Planning』の一室、従業員の数はそれほど多くないが、精鋭ばかりを集めてある、そんな一角に壱花は自分のデスクを持っていた。

「実は姉のレイラから優秀な人材を数人借りていてね。壱花、まずはここにいる人たちを紹介するよ。こちらからエディ、ライアン、レイン、立花、シバ。出身はアメリカ、イギリス、台湾、日本、インド。で、こちらイラストレーターの壱花さん。私の愛妻だ」

さくっと紹介していく中にも甘いトラップが。

(ひえぇああ愛妻ぃぃ……)

ぶわっと赤面してしまった。

「柊……じゃなかった……草壁 壱花です。よろしくお願いします!」

ジェインと同じ姓を名乗るのにまだ慣れていない。もちろん結婚は仮だけれど、婚姻は本物だし夫婦であらねばならないのは頭では理解している。同じ会社なのだから、少しやりにくさはあるのかもしれない。

「お噂はかねがね。耳タコぐらい、聞いてるよ」

「ほとんどがノロケだけどね」

「よろしく、壱花」

「おシゴト、イッショにガンバリましょう!」

握手しながらワールドワイドな挨拶を交わしていった。数人、英語しか話せないというスタッフがいると聞いている。日本語がまったく話せないジェインの伯父のこともある。壱花自身も改めて、英会話を勉強しようと心に決めていた。

そんな中、ジェインと壱花が勤めていたSOTの仕事の依頼は確かに引き受けていて、壱花ももちろん引き続き、イラスト提供は続けているから、弥一と接点はあるにはあるのだが。

(やっちゃん、少し痩せたのかな……)

顔つきがあの頃と比べて、断然柔らかくなった。SOTの仕事は自分に合っていて楽しいし、大企業でブラックな金子商事よりは気力が削られないから助かるわと笑っていた。けれど、決してまだ健康的だとは言えないようだ。

「あ、」

目が合った。すると、隣に立っている女性が、その視線に合わせてこちらを見た。

美人だ。背の高い弥一に負けていない。

二人は視線を外し、ノックをしてからミーティングルームへと入る。そこでは小1時間ほど前から、ジェインを始めとするスタッフとともに会議時間を持っていた。

(仕事の話だから、私には直接関係ないかな……でも……)

仕事とはいえ、今カレと元カレの対峙の構図。無いとは思うが、口喧嘩みたいになっていたらどうしようと少し不安が残る。

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