EP 31
「もちろんダブルベッドだよ。でも、壱花。申し訳ないけれど、俺は今、会社を立ち上げたばかりで仕事がちょっと忙しくてね。いつも帰りは遅くなるんだ。だから、先に寝ていてくれて構わないから」
「ふぁ、はい」
ベッドルームというだけで、少し緊張しているようだ。抱っこしている身体に力が入ったのか、少し体重が重くなった気がした。
そんな緊張も愛しい。このままベッドに押し倒したいくらい。
くるりと壱花を一回転させてはしゃいで見せて、芽生えた欲望を抑えた。
「で。こっちが俺の部屋で、反対側が壱花の部屋〜〜」
個室のドアを開けると、ライト付きのデスクとイス。そして。
「わあ! イーゼルが置いてあります!」
すとんと壱花を下ろし、二人で部屋へと入る。
「壱花ちゃん、油絵や水彩も描くって言ってたから、用意しておいたよ。趣味で使ってもらってもいいし、仕事でも。まあ、あんまり仕事は持ち込んで欲しくないけど、壱花ちゃんの場合、趣味とイラストレーターの仕事の境界線が曖昧だから難しいかもしれないね」
「そうですね。でも仕事でも趣味でもイラスト描いているときが一番幸せですから」
ほわっと頬が染まった。
けれど、ジェインはこらこら! と声を荒げる。
「わかったよ! 壱花ちゃんが俺と一緒にいるときが一番幸せって言ってもらえるまで、禁欲する!」
「ええぇ!!」
「間違えた! 禁酒する!」
「……なんだ。禁酒……ですか」
「うん。壱花を幸せにしたいからね。素面のときに全力で壱花のことを愛さないと!」
「大丈夫ですよ! 私はもう幸せいっぱいですから。ジェインさんのこと大好きです」
「じゃあ俺と一緒のときが一番幸せって言ってくれる?」
「はははいぃぃ」
ふうっと息を吐いて深呼吸する。
ヤバ可愛い。
「ジェインさんと一緒にいると幸せな気持ちになれます。世界一大好きです」
ぶわっと愛しさに包まれた。ぎゅっと壱花を抱きしめ、何度も何度もキスをした。
「なにこれなにこれ、もしかして今日から毎日これ? 絶対身がもたない! 幸せ過ぎて身がもたない!」
「これで禁酒も無しですね」
「うん。今夜はディナーをデリバリーしておいたから、飲む!」
「良かった!」
笑い合って、当分の間、抱き合った。
✳︎
(びっ……くりしたあ)
ジェインの言動に翻弄されている自覚があった。




