EP 30
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「すすすみません! 荷物が多すぎてしまって。これでも結構、減らしたんですが……」
山積みになっている段ボール箱の前で、壱花はへしょんとしょげていた。
(ヤバい。しょげる壱花ちゃんの頭に、垂れたケモミミが……見える)
ここはジェインの住んでいる家。名古屋の一等地に立地する、高層マンションだ。IT関連会社SOTのCEOだった時には、東京のタワマンで一人暮らし。
今まで女性とは淡白な付き合いしかしてこなかったため、付き合ったり同棲したりとまでいった女性はほとんどおらず、常にひとりきりの生活だった。
それが、柊 壱花と、仮の契約とはいえ結婚し、これからは甘々な新婚生活が待っていると思うと、ジェインの心は明るく、喜びで満ち溢れていた。
「朝から晩まで壱花ちゃんと一緒に居られるなんて、マジで最高! っと、この前から心がダダ漏れ過ぎているな、俺」
しょげている壱花を取り敢えず、ぎゅうっと抱きしめた。半分はイギリスの血。愛情表現は行き過ぎでやり過ぎなほど、大げさだ。
「壱花ちゃん、君のためなら他に倉庫だって借りるし、荷物が多くたって平気さ。それに、壱花所蔵のマンガ専用棚だって、特注したんだからね。見てごらんよ、これ」
リビングにどどんと大きな書棚。棚の高さを変更することができる、完璧なものだ。
「ほら、マンガって俺はあんまり読んだことがないんだけど、確か大きさがまちまちだったよね、見て! これを取り外してこうすれば……大きなサイズのものも入るから。それにこの棚をスライドすると、後ろにも棚があるから、永久保存版なマンガはここに収めるといいよ」
「うわあ」
さっきまで、しょげていた壱花の表情が変わった。心なしか、瞳もうるうるとしている。
「こういう本棚……小さい頃からすごく憧れていたやつです。SOTでいただいたお給料で、いつか買おうと思っていたんですが……前に住んでたところは狭いから置けないなーなんて思ってました」
「嘘! マジで! じゃあ俺、ちょう良いやつ買っちゃったんだね。以心伝心ってやつ? ネットで壱花と使う家具を見ていたら、目に留まってね。マンガがたくさんあるって聞いてたし、絶対これがいいんじゃないってピンときて衝動買いしちゃった」
「ご迷惑にならないようにマンガは処分するつもりでいたんですが、持ってきて良いって言ってくださったので持ってきてしまいましたが……お言葉に甘えて使わせていただきますね」
「うんうん使って使って! これからはここにあるものは全部、壱花のものだから遠慮なく、ね。もちろん、俺も壱花のものだから、嫌なことや困ったことがあったらなんでも言ってね!」
はい! と元気よく返事をする壱花が愛しくて、もう一度抱きしめた。ぐいっと身体を寄せ、少し抱っこする。壱花の足が床から浮いたところで、くるりと振り回した。
「わあ!」
遊園地のコーヒーカップにでも乗っているかのように、くるりくるりと回りながらリビングから出て、ベッドルームに到着。




