EP 25
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帰りの飛行機では、疲れたが出たのだろう、壱花はぐっすりと眠ってしまっていた。
ジェインは、父親ハリーとのこの夕食で、伯父フレディのことで話す機会を持っていた。それは、壱花がトイレに立ったのを機に、ジェインとハリー二人で交わした会話だ。
「ジェイン。フレディが暴走して迷惑をかけた。すまなかったな。おまえにもレイラにもずいぶんと嫌な思いをさせて、迷惑を掛けてしまっているよ」
「いや、そんなでもないよ。なんだかんだ言っても俺らは日本にいるからね。でも父さん、伯父さんが、母さんがイギリスに来ないことで父さんは苦労している、みたいなことを言っていたけど、どういうこと?」
「ジェイン、このことは今までは話してはいなかったが、なぜフレディがあんなにもおまえの結婚相手に頑なに首を突っ込んでくるのかを話すよ」
おつまみのナッツを口へと放る。ぽりぽりと咀嚼音が響き、その音が止んだ途端、ハリーが真剣な表情で話し始めた。
「かいつまんで話すとフレディはね、舞を愛しているんだよ」
「え! 母さんを?」
二の句が告げられなかった。
「正式には愛していたかな。俺と二人、舞を取り合ったという経緯があってね。運良く、俺の方が舞と結婚できたわけだけど、フレディが舞を失って苦しんでいるのを知っているから、彼女は日本で住むことを選んだんだよ」
「全然知らなかった……」
「まあ子どものおまえたちに話すことでもないし、こんなのは聞いてて気持ちの良い話じゃないからね。でも知っての通り、俺は父から受け継いだ事業をほっぽらかして退くことはできなかった。だから、舞は日本で育児を、俺はイギリスで仕事をすることにしたんだ。だからって、俺が人一倍苦労しているってわけじゃない。ただ、社交界へと出向くとき、パートナーが居ないとね、ちょっと言われちゃうんだ。逃げられたとか、うまくいってないとか。そうなると、あんたのところ仕事の方は大丈夫なのか? と、手腕を問われることになるってわけ」
「なんだ、そんなことか。伯父さんがあんまり大げさに言うもんだから、もっと大変なことになっているのかと思ったよ。父さん、あなたならそんなことはどうってことないでしょ?」
「まあね。フレディが思い込んでいるほど、実際は気にしてないし、支障はない。仕事の都合なんかで、俺の愛は揺るがないよ。俺は舞を愛しているからね」




