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EP 24

「きっぱりね」

「へえ。それは残念ですね」

「別に……そう落ち込んでるわけじゃないから」

心とは裏腹な返答。だからなのか、その言葉に表情を歪ませたのは、弥一ではなくその女性だった。

「十分くさってるように見えますけど。強がりなんですね。彼女さん、どんな方だったんですか?」

「……優しくてお人好しで、他人のことばっか気ぃ使ってて」

「そんな良い子なのに、なんで別れちゃったんです?」

ぐいぐい来るなあと思いつつ、苦笑い。けれど、独りの寂しさからか、弥一はいちいち答えていく。

「俺が……悪い」

頭がふらっとしたが、手を上げてもう一杯生ビールを注文した。

「浮気とか?」

「…………」

「へえ。するんですね。そんなタイプには見えないけど。いや、見えるか」

女性はふふと微笑むと、オレンジ色の酎ハイをひとくち、口に含んだ。その様子を隣で見ていた弥一だったが、女性がグラスを置いたと同時に、目の前にあるだし巻き玉子に視線を戻した。

「でもまあ、やっちゃったもんは仕方ないですよ。恋人の浮気のひとつぐらい許せなくてどーすんですかって感じですけど。まあ元気出してくださいね」

驚いた。浮気肯定派、こんな女もいるのか、と。

女性は頬づえをついて、にこっと笑う。口元、下唇の脇にあるホクロがいやに艶かしかった。

「私が元気づけてあげましょうか?」

ナンパだったのか。気がついて少し驚いたが、弥一は今はフリーで誰にもなんの気兼ねなく、女性と時間を共にすることはできる。

「2軒目に行きます?」

その言葉に躊躇することもなく頷いた。ただ、胸がちりと痛む。それはその胸の中にまだ、壱花という存在があるがゆえなのだろう。

(けどもう今更だ。壱花は、他の男……あのCEOのものになっちまったんだから。きっと今ごろ……二人で仲良くよろしくやってるんだろ)

強がってはみたものの、心臓がぐっと握りつぶされるような痛みがあった。

弥一は、そんなことは今さら気にすることじゃないと、自分に言い聞かせ首を振った。そして女性に向かって「行こう」と短く返事をし頷くと、伝票とカバンを鷲掴みにしてレジへと進んだ。

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