EP 10
「モーニングコーヒーを頼んでおいたんだ。ちょっとごめんね」
「え、ちょ、まっ」
ジェインがいきなりジュエリーが収められている箱をベッドにぽいっと放り投げたのを、ダイビングしてキャッチした。
「ううう、きききんこ、金庫くださいっ!」
両手で持って頭上高くかしずいていると、足つきトレーをカチャカチャと言わせながら持ったジェインが戻ってきた。
「なに! 壱花ちゃん、なにやってるの?」
壱花はその体勢のまま、ベッドに顔を突っ伏すと、「どうか神さま、私に考えるお時間と理解力をください」と言った。
ぶはっと吹き出した。
トレーをテーブルに置いたジェインが腹を抱えて笑い転げるのを横目で見ていると、ふわりとコーヒーの香りが漂ってきて、それだけで目が覚めた気がした。
(本当にこれどうなってんのこれえ)
パーティー会場に入った途端、ずっと念仏のように唱えていた。
だだっ広いパーティー会場。立食形式で、たくさんの料理がカウンターに並べられている。高く積まれた食器にワインやシャンパンなどのアルコール。傍らには姿勢の良い、多くのスタッフ。
オードブルに始まりローストビーフ、ステーキ、マッシュポテト、ローストチキン、サラダ、キッシュなど、いつもならがっついて食べてしまうところだが、今現在、ほとんど目に入ってこないし、食べたいとも思わない。
正直、食欲もどこか遠くへ飛んでいってしまったようだった。
ハイブランドのジュエリーとドレスで着飾った壱花は、ジェインの横について、ジェインの腕に腕を回している。ジェインの後についていくひな鳥のようだと思うが、そうするしかなかった。
会場にはもちろん、多くの着飾った女性やタキシードの男性がアルコールを飲んだり食事をしたりしながら、話に花を咲かせている。
そんな中、英語で簡単に挨拶を交わしていくジェインが目当てだったのか、人が続々と寄ってくる。第一声には、「Congratulations on your wedding! 」




