桜と家と兎さん
「…それでボクはこの地へと辿り着いたのさ」
「本当に!?凄いやあ!」
「騙されないでシュヌパ、ドラゴンと友達になった後に世界を救う力があったら、クマくらい倒せるから」
「あ、バレた?」
「そりゃあね!?」
今は売れ残りらしいリンゴを抱えて、彼らが住んでいるという里へ赴いている途中だ。
「ぶっちゃけると…さ、実は記憶が曖昧なんだよね、記憶喪失って奴かな」
「え?それマジで?」
「これはマジ」
「じゃあ、記憶が戻るまで僕たちと暮らそうよ!」
聞けば、彼らは天涯孤独で、支え合い暮らしてきたらしい。
そして母代わりである、ヒヨさんという人に育てられ、今は冒険者という職業に就き、生計を立てているらしい。
「じゃあボクも良ければ…キミたちと暮らそうかな!大丈夫。足は引っ張らないさ!」
「今さっきクマに襲われてたような」
「ナンノコトダカワカラナイヨ」
「目が泳いでるぞ」
そんなこんなで話しているうちに着いたらしい。
そこには豊かな自然と咲き乱れる桜の里があった。
《ようこそ桜ヶ里へ!》
少し古びている看板にはそう書いてあった。
「綺麗な里だな…」
思わず声が漏れた。
「ああ、特にこの里の中心にある【祭月桜】アレのためにわざわざ遠くから来る人もいるほどで、僕らの誇りなのさ!」
シャルコロがそう言う。
「桜の麓には神社もあって、四季の境目にはお祭りを行うんだあ」
と、シュヌパは言った。眠そうだ。
里とは言っているが、土地は広く、遠くの方には発展した街も見える。
「すっげえ場所に住んでるんだな…」
「ああ、そして俺たちの家は…」
そう言ってリズミカルに手を叩くと、大きな木の上からロープが垂れてきた。
「ここさ!」
ツリーハウスと言うのだろうか、唖然として見ているボクの横で、シュヌパは殆ど寝かかっていた。
オイオイマジかよ、こいつ書き溜めてる量は一万字程度らしいぞ