ウサギさんとロストと王様
「あのさぁ」
「ああ、どうした?」
「狭い」
「え?」
「だーかーらー!狭いってんだよ!なんでこんな狭いトンネルで横並びで歩いてんだよ!?」
ラパンは狭いトンネルの中を、ランプが灯る簡易的な魔法とともに歩いていた。しかしこのトンネル。とてつもなく狭いのである。
「おや、悪かったね」
とは口でいうものの、悪びれる素振りもせずにロストは前を歩こうとしたが、灯りを遮るためまたしてもラパンに怒られるのであった。
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トンネルをぬけた先には、ドームのように桜の幼体を覆った障壁が、淡いピンク色の光を放つ広大な空洞があった。
「……!?ここは?」
「こここそが妖桜の幼体の封印所。封印が解ければたちまち成長するだろう」
そう言うと、ロストは何処からかフラスコを取り出した。地味に手の上に浮かんでいるのが魔力の無駄遣いだしダサい気もするが、ラパンは言わないでおいた。
「そのフラスコはなんなのさ?」
「ああ。あの桜を枯らす特製のタレ……かな」
「なに代々伝わってるみたいな言い方してんだよ、要は毒薬じゃないか!?」
「なに、そんなに怖いもんじゃないさ」
「えぇ……」
ロストは害のないものだと言ったが、おそらく劇薬なのだろう。
ラパンが身震いすると、何処からともなく豪華そうな服に見を包み、少し歪んだ、禍々しい懐中時計を持つ男が騎士のような風貌をした人たちを引き連れてやってきた。
「何者だ」
「お前は……お前に……!俺は、俺こそは!あんたに何もかもを奪われた者だ!」
「はて………?誰だか見当がつかないの」
「ああ、だろうな。こんな事例はなかったはず。俺が聞きたいのはただ一つ、何故こんなことをしているのか、そして何度目だ『時空を歪める』のは」
「……!?お主……まさか!?」
「あぁ、お前の"想像"通りだよ」
「「貴様!無礼な口利きを!この方を誰だとあらせられる!」」
「知ったこっちゃあ、ないね。コイツに敬語を使うほど俺は落ちぶれちゃいないんだ。」
状況を一人飲み込めないラパンはおろおろと口を挟んだ。
「なぁロスト、この人は誰なんだ?高貴な方のように見えるけど……?そして時空を歪めるって……?」
「……こいつはこの国の……王だ」
「はぁ!?お、おうさま!?」
ラパンはたじろぐ。なにせ王だ。
「……ほう、だがお主ら二人が来たところでどうするというんじゃ?」
「その桜の運命を断ち切る……!」
「下手に触れば封印は解ける。それを知った上での行動か?」
その瞬間、王から殺気が放たれる。
(……ッ!重い!)
ラパンが足を見ると震えていた。本能が逃げ出せと言っているのだ。
「俺なら出来る。お前みたいな残虐なやり方でなくてもな」
「何であろうと桜には触らさせぬ、やれ」
「「御意!!!」」
王の前に騎士が勇みでる。
「ちっ……面倒だな……」
ロストは何処からか白と黒の入り混じった剣を取り出した。
「時間がねえんだよ!」
その一太刀でロストはすべての騎士を薙ぎ払う。その強さに王もラパンも驚愕するより他なかった。
「……この者達はこの王国でも屈指の実力者だったんじゃがのう……」
「しらねーよ、そんなこと。いいからそこをどけ」
「どけと言われてどく者がいるとでも思うか……?」
そう言うと、王は「ふんっ!」と力を体に込めた。
王の服のボタンが取れた
ラパンが「ん???」という声を上げるのと同時に、服はみちみちと音を立てて裂けた。
「「えぇ……」」
王は、上半身ムキムキであらせられた。
「ふうぅぅぅぅ……」
「嘘……だろ?」
「ちぃっ!面倒なことになったな」
王はその弾けんばかりの筋肉を地面へと叩きつける。すると地面が隆起し、ラパン達へ襲いかかった。
「おわぁっ、っと!ロスト!何か打破できる力はないのか!?」
「これはあの忌々しい懐中時計のせいだ!あれを破壊しない限り王は止まらない!」
唐突な意味の分からない王の変化にどまどいを消せていなかった二人だが、以外に連携は出来ている……のかもしれない。
「はあっ!」
ロストは剣を上段に構え、振り下ろす。
「ぐううぅぅぅ……!」
浅い太刀傷が付いたものの、予想以上に頑丈な体に驚きを隠せない。
「う……うそだろ?」
「ロスト!ボクが囮になる!だから桜に一矢報いてくれ!」
ラパンはそう伝えるが、ロストは首をふる。
「君では無理だ。即座に追いかけられて握りつぶされるのが関の山……だね」
「うぅ……」
「このスピードとパワーと変貌には正直僕もびっくりだよ」
そうは言うものの、ロストは涼しい顔で応戦している。エアリエルが警戒するのも納得できるくらい強い。
うん?まてよ……?
「ロスト!風の魔法なら逃げられるかもしれない!」
「無理だね」
ロストはそう一蹴した。
「え!?なんでさ!?」
「理由は2つある。1つ、お前はすでにエアリエルによる強化を受けている」
そう言うと、ラパンの腰の宝玉からエアリエルが現れる。
「オイラのことバレてたのか……」
「マジで?ボクが早くなったのかと思ってた」
「んなわけあるかよ、オイラのおかげさ!」
茶番を繰り返していても、王の攻撃は止むことを知らないが、そんなことは構わずロストは言う。
「2つ、俺の主役っぽい感じが薄れる」
「……え?」
「だーかーら!」
ロストは苛立ったように王の攻撃を弾き返す。
「俺が目立たないだろうがあああ!」
「えぇ……」
あいも変わらずロストの顔は仮面で見れないものの、何となく想像できてしまうラパンだった。
「だから持久戦だ!アイツがくたばるまで俺達は攻撃を流し続けなくてはいけない」
「それじゃあ間に合わないじゃないか!」
そう、それでは間に合わないではないか
そう思ったときだった。
「うわぁ!やっと出口に出てきた!」
「そうだな、戦闘の音が聞こえる……ラパンは無事か?」
「狭かったし暗かったです……うぅ……」
「え!?なんで!?」
「なんでって……」
そいつらは顔を見合せて言った。
「「「我らの絆は決して消えない!その名は……!自由のんびり隊!!!」」」
そして、後ろで爆発が起きたのだった。よく見るとロストがやったみたいだ。何してんだこの人。
作者の更新が遅すぎて禿そう