ウサギさんとロストとタイムリミット
お久しぶりの投稿でごめんなさい!
「あれ……確かボクは」
そこはベッドの上だった。時計を見ると、午前七時を指していた。
「なんだか……違和感が……いや、既視感?」
「察しが良いじゃないか」
振り返ると、窓際に座った白髪の何かがいた。
何かと言ったのは、何かのマークをあしらった仮面を被り、尚且つ中性的な声をしていたからだ。
白い髪とは対象的に、黒いマフラーを首に巻き、黒い外套で覆われており、その表情は伺いしれない。
一陣の風が巻き起こり、目を開けると慌てた様子のエアリエルがいた。
「ありえない……!お前はこの世界に存在しないはずだ!」
「ど、どういうこと?」
「……オイラは、精霊は魔力を感知することが容易だ。相手が物だろうと、なんだろうと希薄な魔力くらいはあるはずなんだ。だけれどこいつからは一切の魔力も感じない。魔力を持ち合わせていないなんてこの世界じゃ有りえないはずなんだ!」
「……その通りだよ、エアリエル」
「……何故オイラの名前を知っている」
「まあまあ、細かいことは結構だ。それよりラパン」
エアリエルはとても警戒しているが、ラパンは何故か、危害を加える気も、加えられる気も全くしなかった。
「先程、既視感がする……と言ったね?その通りさ、この時間軸はやり直されているんだもの」
「はっ?えっ!?やり直されている?」
「ああ、そうさ」
「もう数百、数千と繰り返してるんだ、スリジエでの悪夢は」
「……っ!どうしてお前にそんなことが解る!ラパン、逃げた方がいい!こいつは危険だ!」
「そんな危険だなんて……ねぇ?酷いなあ」
何が面白いのか、黒い外套を羽織ったそいつはケラケラと笑った。
「繰り返してる……つまり既視感を覚えたのって、繰り返してるから?」
「まぁ、どうだろうねえ」
「それより繰り返されるってことは、あの悪夢は!どうやって打破すればいいんだ!?」
「キミがやるべきことは三つ。一つ、妖精を連れて行く」
「あっ」
「ラパンお前忘れてたのか……」
エアリエルは呆れたような声を発した。
「……二つ、精霊を召喚してもらう」
「あっ!そうだ!前の時間軸ではエアリエル出してなかった」
「おい!オイラにも美味いもんくれるって約束だったじゃないか!」
ラパンは気まずそうな顔をしたが、黒い外套を羽織った誰かは話を続けた。
「あの桜は【呪い】だ。精霊がいれば抵抗値が上がる。あるのとないのとでは大違いだ」
「なるほど……」
「そうだ、オイラから聞き忘れてたけれど、アンタは一度前の世界を体験しているということか?」
「ああ」
「……そうか」
「そして三つ。この事件には黒幕がいる」
初めてここで黒い外套は怒りを露わにした。漏れ出る殺気は、肺に沈むように重かった。
「それって……」
とラパンが言い掛けた矢先、リビングの方からフライパンを叩く音が聞こえた。
「……飯の時間みたいだな、行って来い」
「……なんでも知ってるんだな」
ラパンがそう言うと、ああ。とアイツは答えた。
「そうだ、一つだけ聞くね。キミの事はなんて呼べばいいの?」
「ロスト」
「え?」
「ロストだ。そう呼んでくれ」
「……分かった」
ラパンはそう言うと、リビングへと駆けていった。
パタン
と、扉が閉じたのを確認すると黒い外套……いや、ロストは「ふう」と言うと外套を外し、画面を外した。
「真夏だってのに黒!暑いったりゃあらしねえ……屋外じゃないから風魔法も氷魔術も使えねえし……」
そうボヤくと、ラパンが寝ていたベットに横たわった。
「なに、どうせアイツらはご飯を食べたら他の奴らとすぐに祭りへと向かう。せっかちな奴らだからな、それまで寝たところで誰も文句は言わないさ」
そう言って、ロストと呼ばれたソイツは、眠りについた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
(…来てしまった)
綺麗な提灯、無数の屋台。楽しそうな民衆の声。
(今日、ここで封印が解ける。解けてしまう。)
「タイキーック!何暗い顔してんのよ!」
そんなことを考えていると、連れてきた妖精がタイキックをかましてきた。ダメージはないが。
「ああ、ごめんごめん、少し考え事を…さ」
「そうなの?まあ良いけれど。それより見なさいよこの浴衣!」
妖精はキャッキャと浴衣の姿でブンブン飛び回った。
「ヒヨさんに作ってもらえてよかったねぇ」
そう、妖精の浴衣はヒヨさんが作ったものだ。「余った布でごめんなさいね」と言いながら馬車でわざわざ作ったものだ。
ラパンが時刻を見ると、時計は正午を指していた。花火が上がったのはだいたい6時頃。
(タイムリミットは6時間しかない…っ!)
ラパンはみんなに馬車の中で何度も、事を話そうとしたが、その度に考え直した。
(いや、急にこんな話をしたところで混乱するだけだ)
しかし、いい案が一人で思い浮かぶこともなく、ラパンはとうとうここまで来てしまった。
今ボクが出来ることは……一体……
「今ボクに出来ることは……とか考えてんだろお前」
一陣の風が舞う。ハッとして上を見ると、ロストが街頭樹の上にいた。
「お前は!」
「おっと、五月蠅い」
そう言って、口を塞ぎ路地裏に連れてきた。
「ぷはっ!何すんだよ急に!」
「あー、怒るな怒るな、というかエアリエルに警戒されすぎてて、腰につけてる精霊の宝玉からのオーラがやばい」
確かに言われてみれば風の魔力が一定方向にだけとても強まっていた。
「ちょっ!エアリエル一旦抑えて!」
そう言うと、風の魔力は収まった。
「ふぅ……」
「あちゃー、なかなか警戒されちゃったみたいだわ」
ロストは肩をすくめていった。
「いやいやいや……それより、路地裏なんかに連れ込んだってことは、何か話があるのか?」
と、尋ねると
「ああ、そうだ。察しがいいじゃないか」
と、言った。
「あの「妖桜の悪夢」が起きた世界を体験してるからこそ、おおよその原因、解決法を少しは掴めているんだ。今回の目標は一つ。あの悪夢を止め、黒幕を締め出すことだ」
ロストは、冷たい声でそう言った。
ちょっと…試験前でバタついてます…ごめんなさい…
それとユニークアクセス500まであと少しです!いつも応援してくださる読者の皆様!本当にありがとうございます!