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勇気の兎と正義の羊〜その者達は諦めない〜  作者: ラパン
桜と祭の国チェリフェス編
22/39

ウサギと変なシャルコロ②

「それで、シャルコロが変なことをしている…だっけ?」

「いや、正確には怪しいんだぁ。最近コソコソしていてぇ」

「それで、今やっていたことが…」


 シュヌパの手元を見ると、小さな骨が握られていた。ピッキングしていたようだ。

骨で。


「良くないなあ、人の部屋の「カチャッ」盗み見は」

「いまさも当然のようにピッキングしたよねぇ、どこで習ったのさぁ」

「なんかできるんだよね」


 ボクは記憶喪失になる前は何をやっていたのかよくわからないくらい、色々なことを体が覚えている。


 例えば剣術、どこで習ったのかはわからないが、なんか使える。オムライスも作れる。だけれど、この国の郷土料理の「うどん」は作れない。


 …まるで、機械のように。


「さあ、今からシャルコロの部屋を開けるけれどいいね?」

「ごくり」

「それじゃあ!いざごかいちょー…!」

「何をやっているのかしら?」


 底冷えするような声が、聞こえた。


「お、おかしいなぁ…ラパン、今夏なのに寒気がするよぉ…」

「き、気の所為じゃなさそうだね、は、葉っぱとか、凍ってるからね…」


 恐る恐る後ろを振り向くと、メロルンがいた。


「それで?あんたらはなんで閉まっているはずのシャルコロの部屋を、それも空いた状態の部屋の前にいるのかしら?」


笑っていた。だけど目は笑っていなかった。


「「ヒッ…」」


     だめだ、これは死ぬ。

そしてボク達は、死を覚悟した…


「わ、私も入れなさいよ!」

「「えっ」」


目を開けると、すでに部屋の中に入りつつあるメロルンの姿が目に入った。何やってるんだこいつ。


「ほら、さっさと行くわよ?」


 ボクとシュヌパは顔を見合わせ、肩をすくめたあと、メロルンの姿を追うのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「これは…旗?屋台の?」

「これは…豆や小麦の入った袋と…鉄板?型を流し込むタイプなのかな?」

「…これは帳簿ね、どの日に何を売ったのか、何を買ったのかもびっしり書いてあるわ」


 そう、シャルコロは商売をしていたのだ。


「ただいま〜…って…まって、君たち、何でいるんだ」


 シャルコロが呆れたような顔で、帰ってきた。


「お、怒らないの?」

「ま、そのうち話そうと思ってたから…さ」


 シャルコロは何処から出したのか、袋の中から、たくさんの道具を出した。


「それは?」

「魔道具だよ、空間収納系の」

「えっ!?そんな高いのどうやって!?」

「道に迷っていたおじいさんを助けたら、お礼として貰えたんだ!凄いだろ!あれ?ラパン、どうしたんだ?変な顔して」

「あ、ああ。うん。ダイジョーブダイジョーブ」


 おじいさんって師匠だ…

数日前親切な少年が、道を教えてくれたと言っていたがそんなすごいものを渡していたとは…


「それで、きっと商売をしていたのよね?」

「うん、そうなんだ」


 シャルコロは少し黙ったあと、覚悟を決めて言った。


「ぼ、僕商人になりたいんだ!」

「「「おおおお!」」」


 シャルコロにそんな夢があったとは…


「だから、僕は」

「僕はそんなの認めないぞ」


シュヌパがすごい剣幕でシャルコロの胸ぐらを掴んだ。普段の間延びした声は、どこにもない。


「しゅ、シュヌパ!やめなよ!」


 ボクが言っても、聞く耳を、持たない。

シャルコロは、俯いたままだ。


「なんとか言えよ!なぁ!?」


 今にも泣きそうな声で、シャルコロに怒鳴ったあと、壁にドンと音を立てて叩きつけた。


 シャルコロは、何も言わずに、ただ、シュヌパの顔だけを見続ける。


「なんっ…だよ!その目は…!」


 シュヌパはそう言うと、どこかへ飛び出していった。

メロルンは、状況が飲み込めないといった様子で立っていたが、やがてシャルコロのそばに立った。


 ボクは、シュヌパを追いかけに外に飛び出した。

一人には、させていけないと思ったから。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 シュヌパは、大きな桜の木の上にいた。


「…」

「…」


 桜の花びらが降りしきる中、沈黙ばかりが訪れる。


「あー!面倒くせぇ!シュヌパ!ボクはキミを元気付けたいと思った!だけどどうすればいいかわかんないよコンチクショウ!」

「…」


 そして、息を大きくボクは吸った

「だけど!この家に少ししかいない新参のボクでも!このままじゃ駄目だってことくらいはわかる!」


「……」


「降りてこいよ!キミがどうしてここまで拒絶したかはわからない!だけれど、そんなボクでも!話を聞いて二人の架け橋くらいにはなれる!」


「………ハハッ…ハハハッ。アハハハハハ!」


 ボクはいきなり笑ったシュヌパを見て一瞬ビクッとしたが、恐る恐る、言葉をかけることにした。


「ちょっ…どーした!?」

「いやあ、あんまりにもおかしくてねぇ…あー、おかしぃ」


 シュヌパは笑っていたが、口調はもう戻っていた。


「ラパン、君って正直者なんだねぇ…こんなに笑ったのは久しぶりだよぉ」


シュヌパはスタッと桜の木の上から飛び降りた。


「僕は、怖かったんだ。シャルコロと離ればなれになるんじゃないかって、それに裏切られたような気がしたんだ」


「裏切られた?」


「ああ、もうかなり前の約束になるんだけれどねぇ、昔シャルコロと『一緒に強い冒険者になる!』って誓いを立てたんだよねぇ、だけれど、だからって親友の夢を妨害するなんて我儘なことしちゃったよぉ…」


「シュヌパ…」


「…それに、僕はねぇ…」


 と、何かを話そうとしたそのときだった。


「誰だっ!?」


シュヌパが勢いよく振り向いて、飛んできたナイフをサーベルで弾き返した。


「へっへっへ…悪いけれど、上からのお達しでさぁ…おい!お前ら!」


「「「ハハッ!」」」


左目を眼帯で覆ってる男とそれぞれが武器を構えた三人組が出てきた。


「野郎ども!」

「女もいるのですが」

「ちぃっ…こういうのは雰囲気ってやつだよ、取り敢えずお前ら!白黒の方は捕らえろ、ピンク色の…あの、なんか変なのはやっちまえ!ただし殺すな、殺すのは嫌いなんだ」


「誰が変なのだ、誰が」


シュヌパとボクは武器を構えた。


どうやら、臨戦状態は避けられなさそうだ。

すみません、遅れに遅れました…

ちょっとどーしても外せない予定が続きまして…

すみまちぇん…

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