猿と犬とウサギさん
【シャルコロ視点】
…家族に変なやつが増えた。
それは純粋に嬉しいし、愉快でもある。
ただ、出会い方がいかんせん特殊だった。
僕は捨てられていたところを拾われて。シュヌパは、ある雨の日に倒れていたところを。メロルンは馬車の中で魔物に襲われていたところを助けて。
そして彼はブラッディベアに襲われているところに、颯爽と現れたのだが、なんか剣は錆びてるし、この国の気候には似合わないマフラーや、変なピンク色の髪、黄色の眼。
異国から来たのかと、最初は思った。
だけれどどうやら、彼は記憶喪失のようだった、そしてよく喋り、声がデカい。
本人は気づいているのだろうか?
本人は僕らのように、冒険者で生計を立てるつもりのようだ。
しかし、戦えるには戦えるらしいが、得物が錆びてるんだから、これから冒険者としてやっていくなら武器をどうするのかと言ったら、今更気づいたというような顔で、目を大きく見開いていた。きっとアホだ。
しょうがないから、ヒヨさんが持ってるであろう武器を、貸してもらえと言ったら、いきなり希望の光が見えたというような顔で、ウキウキしながらヒヨさんの所に行った。顔に出やすい奴だ。
因みに、帰宅したあとに、ヒヨさんの倉庫を見せてもらえることになったらしい。
スリジエに来るまでの道のりでも、魔法についての話では顔を輝かせていた。年相応に見えるが、年齢は僕らと同い年なのだろうか。
聞いてみたら、わかんないとの事。名前がわからないのだからそりゃそうか。本人は「え!?あれ、確かにボク何歳だ!?」とのこと。
僕もシュヌパもメロルンも同い年だし、ここは統一して十歳ということにしておいた。ついでに誕生日は出会った日ということで、決定した。
嬉しそうにしていた。
まだ出会って三日ほどしか経っていないのに、すっかりここに馴染んでいる。
素直な性格なのだろう、それに自分が招いた結果とはいえ、ブラッディベアに襲われていた僕達を助けようとしたあたりは、困
っている人を見過ごせない性格なのだろう。
それに、桜月神社を見せたときのあの顔!やはり、この国の桜は最高だと確信した瞬間だった…が。
今
彼の名前が決まり、魔術適性を検査し終わった所…なのだが、無属性と診断されていた。
なにそれ
見ると、みんなわからなさそうな顔をしている。僕もわからない。
これも記憶喪失の弊害なのだろうか?
まあいい、魔術が使えなくたって、死ぬわけじゃない。魔法で、精霊に選ばれることだってある。
そんなことを思いながら、新しく家族になった男、ラパンについて、思いを馳せるのだった。
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【シュヌパ視点】
…不思議なやつが家族になった。
ブラッディベアに、ロクに準備もせずあんな錆びた刀で挑むのなんて、自殺行為だ。
多分アホだ。
「あっはっは!生きていたから全て良し!」
とかなんとか言っていた。まあ、悪いやつじゃないのだろう。
僕のこの口で話すときの変に間延びした声も、変な出生も。それを塗り替えす位、変だからかいつも笑っている。
彼は気づいているのだろうか?
そもそも、誰がブラッディベアからあんな逃げ方をしようと思うのだろうか?本当に、不思議なやつだ。
不思議だけれど、嫌いにはなれない。きっと純粋なのだろう。
いつか、彼が記憶を取り戻したときは是非、彼の生まれた所に案内してほしい物だ。
そんな彼は今何をしているかというと、魔術適性を検査している。
名前も決まり、次は魔術適性。
実は僕は、魔術適性をここで測っていない。
だから、使える魔術を敢えて少なくしてみんなには伝えている。
バレやしないか、少しビビる。
「ごめん、なんか無属性だったわ」
適性士と思われるスキンヘッドの男と漫才まがいのやり取りをしてなんか出てきた。
というか、無属性!?
つくづく不思議で面白いな彼は。
無属性というのは、一般的にハズレと呼ばれている魔術だが…
その性質は、かなり変わっている。
なんでこんなこと知っているかって?
僕が、いや、僕の地元がそういうことを調べていたから。
詳しいことはおいおい話すけれど、色々あってチェリフェスに逃げてきた。
そんなことより、今は彼…ラパンの話をしようじゃないか
はい、文章を千字に増やしました。毎日投稿だとここらへんになりそうです…
まあ、だいたいこのくらいになるかなって感じです!