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兄に恋した  作者: 長谷川ゆう
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崩壊

大学を卒業と同時に、さやかは実家を出た。


新卒で、大学生時代に貯めたバイトのお金の貯金でアパートを借り、生活するのは大変だったが、エリと学生結婚をして実家を出た兄のいない家は、とにかく冷めきった。


兄ミタカは、ミタカの父親も猫可愛がりする程の一人息子で、さやかの母親も息子と言う新しい存在にひたすら喜んでいた。



しかし、その不倫の末に出来た家庭は兄ミタカと言う存在があってこそ「家族」と言う形を保っていた。


兄ミタカが、2歳年上のエリと20歳で学生結婚して、家を出ると言い出し、その「家族」はあっと言う間に、形を崩す。


それは兄ミタカがまるで、今まで崩れかけていたダムの崩壊を塞き止めていた壁のように。



朗らかにみえた父親は兄ミタカに大学を卒業するまでは、結婚を認めないと怒鳴りだし、さやかの母親は、ただただ怯え、うろたえ、時には父親と兄ミタカの喧嘩にヒステリーまで起こすようになった。


高校生のさやかは、愕然とする。


優しく穏和な独りで死んでいったさやかの父親を捨ててまで、母親が手に入れた家庭は、こんなにも脆く、崩れた。


兄ミタカは、結局押しきるように家を出て、エリと結婚し、アルバイトを掛け持ちしながら大学の費用と生活費を稼いだ。



家では、再婚当初は仲の良かった両親も話さなくなる。


父親は帰ってくると毎日のように「ミタカは帰ってきたか?連絡はあったか?」と苛立ちながらさやかの母親に聞いては、母親の返事によって、不機嫌になったりご機嫌になったりする毎日。



母親は兄ミタカから「元気にしている」と電話があれば父親に報告出来るとご機嫌になり、連絡がないと、さやかが高校から帰って来ても、一言も話さない程、不機嫌になる毎日だった。


兄ミタカと言う子供の存在は、台風よりも、家の中を不安定にする存在であり、さやかの存在なんてものは、台風に抗うビニール傘より脆い存在だと知った。


どこでも良いから、この兄ミタカのいない家を出たい、なんなら、独りで亡くなった父親のもとに逝きたいとすら、さやかは思い詰めた。


そんな時、兄ミタカから電話がさやかに直接あった。


「家の中、めちゃくちゃだろ?」

低く、暗い兄の初めて聞く声だった。


さやかは、その時、兄ミタカがこうなる事を最初から知っていた事を知る。


「母さんが・・・その、俺の実の母さんと父さんが別れる話をした時に、父さんの不倫を知ったんだ」


兄ミタカが、中学三年生の時だったと言う。


「俺の母さんは、家庭が複雑でやっと手に入れた家庭が父さんの不倫で壊れる事を知って、不倫したままでもいいから、俺と母さんと父さん三人で家族としていてくれと毎日泣いて頼んだけど、父さんは俺まで連れて母さんと離婚した」


さやかが初めて聞く兄ミタカの家の話だった。


「その後、母さんの気持ちが不安定になって精神科の病院に入院したまま、今も退院出来てない。それを、父さんもさやかの母さんも知ってる上で、結婚してる」



「俺は、母さんが苦労した事も今も辛い事も知っていて、それを知った上で平気な顔して再婚した父さんもさやかの母さんも許せなくて、家族を壊したかった」兄ミタカは、声を絞り出すようにさやかに告白した。



本当に、ごめん。


兄ミタカからきた電話は、兄が大学を卒業するまでに、それが最初で最後だった。







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