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兄に恋した  作者: 長谷川ゆう
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結婚

さやかが、職場の同僚、石田と結婚して驚いた事がある。



家は、自分が愛する人がいて、自分の愛しい我が子がいて、自分と血も繋がりもしない石田は、母親にも兄ミタカにも話せないような事を話しても、睨まれず、さやかをさやかとして、受け入れてくれた場所だった事だ。


母親が、兄ミタカの父親と不倫をして、再婚した家は、さやかにとっては家ではなかった。


母親がいて、父親がいて、好きな兄ミタカがいて、学校に行く場所。


それ以上でもそれ以下でもなかった。


母親は、家事をしてさやかと兄ミタカを淡々と育てる人。


父親は、外に働きに行き、母親と兄ミタカとさやかを養うだけの人だった。


兄ミタカは、さやかが中学に入学してから、周囲の目を気にしながらも、少しずつ好きになった異性だった。


しかし家ではさやかは、まるで空気のようにいるだけの人間だった。


さやかは、ずっと、それが多数の家だと思っていた。


中学生になってから、同級生から聞かされる話しは、さやかの家とは縁遠い、どこか、小説のように完璧に、出来た話だった。


「お母さんが、毎日作るお弁当は最高だけど、口うるさくて嫌になる!」同じクラスの同級生から聞かされた話しに、さやかはショックを受けた。


さやかの母親は兄ミタカには、お弁当をおかずを1から手作りで一生懸命作る、兄ミタカが不機嫌な時は、やたら話しかけては、ご機嫌をとる。


一方、実の娘のさやかには、冷凍食品を解凍したおかずが詰められたお弁当だった。学校にも家にも居場所がなかった、さやかが、どんなに落ち込んでいようが、さっさと勉強はすませたの?くらいしか聞かなかった。


さやかの母親は、自分が兄ミタカの父親を略奪愛のように、兄ミタカの母親やミタカの人生を奪ってしまった罪悪感で、再婚相手とミタカを大事にする事に、必死だったのだろう。



母親は、実の娘のさやかを家で空気にまでして。


さやかの母親は、さやかを疎ましそうに、よく見ていた。


亡くなった父親と、少し似ているさやかを気にくわないような目で見る時すらあった。


母親にさやかは、怯えながら、愛されたいがために、母親に、クラスの同級生の子のような親の悪口を家でも学校でも言えずに、育った。



「さやかちゃんの家は?」

母親の不倫を知っていながら、同級生の女の子は、聞いてきた。


「家もだよ、お兄ちゃんもいるから大変」

口裏をあわせるのが、中学生のさやかには、やっとだった。同級生は、ゴシップもないさやかに、つまらなそうな顔をして、また他の女子と話し始めた。


さやかの気持ちは、どろどろとした感情と、同級生の子達の話しに、嫉妬するしかなかった。


さやかは、感受性が強く、昔から知りたくない事まで分かってしまう。


例え、それが分かった所で、現実は何も変えられない、だから、さやかは、そんな自分に無償に腹が立つ。


分からなければ、知らなければ、無神経ならば、馬鹿ならば、変えられない現実の真実に気がつかなくてすら良いのに。

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