鬱憤
「秋の涼しい風を集めて、溜めといて、暑い夏に部屋に涼しい風を流せたら、良いのにね」
兄ミタカが言うことは、いつも少し変わっていて、発想が豊かだった。
さやかの義理の姉である、ミタカの妻のエリは、さやかより2つ歳が上だ。
エリは、ミタカの少し変わり者の面を煙たがっていた。
石田と職場結婚し、石田は子供は自然に出来れば良いし、いないならいないで2人で暮らしていこうと、少し昔から神経質なさやかに言ってくれた。
結婚から、半年後に華を妊娠している事が分かったが、石田の両親と兄のミタカと母親にしか妊娠後期までは、伝えなかった。
さやかの母親と、なぜか意気投合するエリは、しょっちゅう、週3のパートの日以外は、さやかの実家に入りびたっていた。
両親の離婚から、母親とぎくしゃくしていたさやかは、石田と結婚してから、ますます実家から遠のいた。
「良かったじゃない、石田さん、子煩悩そうだし」
母親は、さやかの妊娠が分かった時も、そっけない。
エリは、子供が欲しくて欲しくて、さやかの母親の所に来ては、ミタカは妊活に積極的じゃない、不妊治療が辛くてたまらないなど愚痴り、さやかの母親も、エリの話しを熱心に聞くありさまだった。
溶け込めない。
さやかの心の中に、母親とミタカの妻エリに対して、唯一のドロッとした気持ち。