漫才「最高のプロポーズ」
ボケ「先日友人の結婚式に行きまして」
ツッコミ「ほう」
ボケ「それに比べ我々売れない芸人は寂しいもんだと、改めて思いましたよ」
ツッコミ「ですねえ」
ボケ「こちとらお金もない、ご祝儀もなけなしの汚れた三万ウォンしか出せません」
ツッコミ「それ日本円だと3000円にも届かないね? 相方としても恥ずかしい限りだよ」
ボケ「プロポーズは高級レストランですって。か~っ、鼻につく!」
ツッコミ「祝う気持ちだけは持て、心まで貧しくあるな」
ボケ「それで、俺もそういうプロポーズの出来る男になりたいと」
ツッコミ「その反骨精神は買いましょう、練習してみます?」
ボケ「いや、相方のやり方を見たいなと」
ツッコミ「僕の? 君がしてみたいんじゃないの」
ボケ「自分よりダサい奴を見て自信をつけたい」
ツッコミ「上等だクズ、最高のプロポーズを見せてやる」
ボケ「じゃあ俺は全力で邪魔する!」
ツッコミ「……まあそれがボケの仕事ではあるね? 仕事熱心で結構。ならレストラン入るとこから、そっちはウェイター役やって」
ボケ「ウィ、ムッシュ」
ツッコミ「こんばんは、ニ名で予約した◯◯です」
ボケ「ヒューッ、お待ちしておりましたお客様ァ~ッ! 彼女さん超カワウィ~ッ!」
ツッコミ「ウェイターってウェイな人のことではないけど?」
ボケ「(女声)もー、ウェイターさんったらチャラ~い」
ツッコミ「おっと彼女役もお前か、まともにプロポーズ出来るわけなくない?」
ボケ「つかマジタイプだわァ、こんなとこより二人で遊ばね? ちな、俺んちルンバあンだけど」
ツッコミ「色々言いたいことはあるが、ルンバで家に呼べると思ってんのか?」
ボケ「(女声)えっ、ルンバが動くとこ見た~い♪」
ツッコミ「すげえ軽い女だった。しかしやめろ僕の彼女に手を出すな!」
ボケ「……フッ。合格だ、ご案内するぜ。彼女さん大事にしろよ?」
ツッコミ「なんだそのシステム、クソうぜえな」
ボケ「ご注文はどうなさいますか?」
ツッコミ「実際何頼んだらいいかわかんないな……シェフの気まぐれ料理みたいなのってあります?」
ボケ「お客様、三ツ星たる当店は完璧と言える料理だけお出しします。シェフが"気まぐれ"で料理するメニューなどございません」
ツッコミ「うっ、なるほどランクの高い店はそういうものなのか。通ぶろうとして恥かいちゃったな」
ボケ「男性シェフが"ティーバックで"厨房に立つ事ならありますが」
ツッコミ「ランクの高い変態だな? 気まぐれが過ぎるだろ」
ボケ「(女声)えっ、シェフがティーバック穿いてるとこ見た~い♪」
ツッコミ「この彼女何でも見たがるな? 好奇心が過ぎるだろ」
ボケ「ではフルコースをお出ししましょう。食前にジャムパンなどはいかがですか」
ツッコミ「シャンパンだろ、食前に朝食とるやつがいるか」
ボケ「(耳打ちする動作で大声)ところでお客様ッ! ご予約の際お伺いしたプロポーズですがッ! 食後になさいますかッ!?」
ツッコミ「台無しじゃねーか、彼女どころか他の客にまで丸聞こえだよ恥ずかしい」
ボケ「(女声)あっ、ごめん今イヤホンでSpotify聞いてた。どうかした?」
ツッコミ「よかった聞かれずに済んだわ。でも俺とのデートがサブスクで音楽聞くのに負けるのかよ、プロポーズとか無謀過ぎない?」
ボケ「(女声)付き合って40年も経てば、デートに思い入れなんかないわよ」
ツッコミ「思いの外熟年カップルの設定持ち込んできたな? そこまで連れ添ってまだ結婚してねえのかよ」
ボケ「(女声)私だって本当は結婚したかったっ! 貧乏だっていいのに、ちゃんと売れてからって先延ばしにしたあなたをずっと待ってた!」
ツッコミ「突然の熱演? でも泣けるほど健気じゃん、さっき軽いとか言ってすまんかったわ……」
ボケ「でももう子供も産めないし、今更籍を入れる事に意味も感じないし、どうだっていいのよ結婚なんてっ……(泣き出す)」
ツッコミ「そんなことはない! ずっと待たせて済まなかった。こんな最低な僕でもよければ、一緒の苗字になって、死んでも一緒の墓に入って……ずっと一緒にいてほしい。僕と結婚してください」
ボケ「(女声)もうっ……待たせ過ぎよっ! でも、喜んでっ!」
(抱き合う)
ツッコミ「って設定が濃過ぎる! 思わず感情移入したわ」
ボケ「フッ、合格だ。お前のような熱い相方とならきっと売れる」
ツッコミ「やかましいわ。これからもよろしく」
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