表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/70

第七十話 冒険者ギルドへ

 次の日の朝。

 俺たち三人は朝食をとるために、テーブルについていた。


 パンを食べるのは実に久しぶりである。

宿屋のパンだから高級なわけではない。安いパンだ。

 それでも俺たちにとっては格別な味。丸二日間、草しか食ってなかったし。辺境の村ではパン自体がなかった。


 久しぶりといえば、ベッドで寝るのも久しぶりだった。

 辺境の村ではベッドどころか家そのものがない。

 さすがに帰ったら家を建てねばならないだろうなぁ。




 二人はもうすっかり元気である。

 もともと病気や怪我をしていたわけではなかった。

 一人は寝不足、もう一人は恐怖に気絶。それでいいのか、と疑問に思わなくもない。



「うまい! このパン、美味すぎます!!」


「エルナ、うるさいぞ。ここは辺境の村じゃない。宿屋だ。隣の部屋に声が聞こえてしまう」


 しかも中規模な宿屋だ。壁だって薄い。

 下手すればエルナの大声は宿屋中に響いているぞ。

 村と違って、笑って許してくれる人間ばかりではない。



「だって! 美味しいものは美味しんですから!!」 


 辺境で暮らしたからか。

 それとも生まれつきの性格か。

 この猫耳族の場合、辺境に住むことは大正解だったなぁ。



 しかたがない。

 強引に黙らせるか。



「いいことを教えてやる。帰りも空を飛ぶぞ」


「……ええ……」


 みるみるうちにしぼんでいく。

 また帰りも気絶するのだろうか。こいつが少しは空を楽しめる日がくるのだろうか。

 エルナと一緒に精神的修行でもするべき……か?




「アラン。エルナをいじめるのはやめなよ。パンをもっと食べたいのかな? ほら、あーん」


 セレシアの伸ばされた手を払いのける。

 いじめているのはお前だ。次から次へとよくもまあ、からかう手を思いつくものだ。

 


「いいか、お前ら。これから冒険者ギルドにいくのだ。少しは気を引き締めろ」


 鳥使いのリーダーの男は、俺たちに冒険者ギルドへ行けといった。

 他に行く当てもないし、土地勘もない。行くしか選択肢がない。


 冒険者ギルドで何が待っているのかは予想がつかない。

 俺たちに冒険者ギルドが興味を持つとは思えないからだ。


 となると、ギルドの背後に金か権力を持った何者かがいることになるのだが。

 通過点ですら一筋縄でいきそうにない。



 俺たちはよそ者。

 しかもこの街の冒険者にとっては、招かざる客だ。




「ねぇねぇ。冒険者ギルドってどんなところ?」


「お前、知らないのか」


 冒険者学園でも実習のために訪問する機会があったし。

 冒険者を目指すなら、一度は訪問するものだろうに。


 ……しないか。セレシアだもんなぁ。



「私はずっと図書館こもっていたからね。冒険者らしいことは学んでいないのだよ」


 こんな冒険者、他にいるか?

 頭はいい。腕はからっきし。何でも食べられる。気品あふれる容姿。

 総合的にみて、変人としかいいようがない。


 

 エルナがうつむきながら、俺の服をつかんだ。


「あの……。僕もまったく知らないのですが」


「お前はちゃんと冒険者学園を卒業したのだろうが」


「あまりに成績が悪かったので、冒険者ギルドに連れてってもらえなかったのです……」


 そっか、そういうこともあるのか。

 もし同じ学園だったのなら、無理やりにでも連れていったのだが。

 冒険者学園はこの国の各地にある。指導方針もさまざまだ。エルナが卒業した学園は質の良いところではなかったようだ。



「まあ、気にするな。これから成り上がればいい」


「そうだよ。エルナはがんばっているよ。やきゅうも上手になっているし」


 セレシア。

 お前に対してもいったのだが。


 

 まあいい。

 じっくりと説教するのは、辺境の村に帰ってからでも遅くはない。



「本来ならば冒険者ギルドについて一から十まで説明したいところだが、今は時間がない。よって一番重要なことだけを説明する」


 だいたい冒険者というものは変人が多い。

 戦いの腕で全てを判断する奴。他人のランク上げを邪魔する奴。モンスター退治を遊びとしか思っていない奴。

 

Sランク以上になると、さらに変人の度合いが大きくなる。

 戦いの腕もたった一人で軍隊並みになるから、なおたちが悪い。国に監視されている奴さえ話に聞く。



「いいか。たった一つだ。相手になめられるな」


 冒険者の世界は複雑極まりないが、これさえ守れば、とりあえずは生きていける


ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ