第六十八話 都市到着
次の日。
朝から飛行と休憩を繰り返して、ようやく目的の都市へと到着した。
辺境の村で暮らしていたので、都市の喧騒が耳に痛い。大きな鳥たちは都市でも珍しいらしく、道行く人々が俺たちをジロジロとながめている。
「こんな街中に着地することはないだろ」
ヴィクトリア村と違い、この都市の周りには平地がたくさんあった。
そこに着地すれば目立たなくてすんだのに。
「なぁに、これも営業だ。都市の住民にすごいと思わせれば、依頼料も高くなる」
リーダーの男はわざとらしく胸をはる。
どう考えても、胸をはる場面ではないだろうに。
もっとも俺は商売のことはよくわからん。ひょっとして効果的なのかもしれん。
「だが、それも依頼主の権力と金しだいだ。金を持っている依頼主だと自由がきく。しょぼい依頼主だと兵士に捕まることもある」
そっちの方が普通だと思うが。
今日のリーダーの男は機嫌がいい。不味い飯を食っていないからだな。
草のかたまりはたまに食べるくらいならいいが、さすがに毎日は遠慮したい味だ。
いずれにしろ、俺たちを招いたのはこの都市有数の実力者に違いない。
なぜ四人目の仲間を迎えに行くのに権力者が出張ってくるのか。俺たちはFランク冒険者だぞ。守る価値があると思えない。
すでに鳥使いたちは撤収の準備をはじめている。
あいからず手際が素晴らしい。
リーダーの男の発言に反応しない。適当な発言にも慣れているようだ。
「依頼主が誰か知りたいか? なら冒険者ギルドに行きな。そこでなら教えてくれるだろうよ」
そういって、リーダーの男はこの場を去ろうとする。
仕事は終わりのつもりらしい。
「待て」
「あ?」
「俺のパーティーを運ぶのを手伝ってくれないか」
足元にはセレシアとエルナが転がっている。
エルナは昨日に引き続き、空を飛んだことに恐怖して気絶している。セレシアの方は徹夜で草の秘密を探っていたから、疲れて寝ている。
一人で同時に担ぐのは難しい。仮に無理やり担いだとしても、人さらいだと誤解される可能性もある。
「まあ、いいけどよ……」
リーダーの男はなんとも微妙な表情になる。
笑っていいのか、同情したらいいのか。迷っている風に読み取れる。
「あんたのパーティーさ。美女が二人なのは、うらやましいけどよ。いくらなんでも貧弱すぎないか? あんたらは冒険者だろ?」
うん。誰でもそう思うだろうな。
俺たちの村では、全員が変人なので目立たなかっただけだ。外からみれば冒険者失格である。
もしかしたらこの国で一番弱い冒険者かもしれん。
だが、俺はこのパーティーのリーダーである。
パーティーの仲間を擁護する義務がある。リーダーの言葉にうなずいてしまったら、信頼関係は崩壊するだろう。俺だけはこの二人を信じてやらなければならん。
それが仲間というものさ。
たぶん。
「これからだ。こいつらだって成長する。世界一の冒険者になってみせるさ」
「はっ! 世界一とはな。大きく出たじゃないか!」
最終目標は元パーティーへの復讐なのだから、これくらいできなくては話にならない。
相手は勇者。伝説の職業で特別なスキルをたくさん持っているだろう。そいつらをボコボコにしなくてはならないのだ。
リーダーの顔。
全然信じてないな。
まあいい。言葉ではなく結果で示してやろう。
俺はかめらを構えながら、都市を歩いている。
セレシアとエルナはそれぞれ鳥使いに抱えられている。わざわざ数少ない女性を選んでくれたリーダーには感謝したい。
毎日空を飛ぶ職業ともなると、女性でもたくましくなるのだろう。少しは二人には見習って欲しい。
かめらから、五ゴールド硬貨が落ちてくる。
時々は五十ゴールド硬貨も。
やはり風景は稼げないな。人の顔をとった方が『ゆーちゅーばー』では金が稼げる。
村を出る時は無一文だったから、小銭でもありがたい。
空を飛んでいる時もそれなりに稼げたが、金は多ければ多い方がいい。今日はそれなりの宿に泊まりたいからだ。
俺一人だったなら、野宿でもいい。しかし一応は美女二人を連れているからな。
森の中よりも都市の方が危険。
ある意味ではモンスターよりも、人の方が危険とはな。なんとも皮肉な話である。
道の両側にはレンガで作られた建物が並んでいる。肉屋、野菜をうっている店、服や装飾品を売っている店。金さえあればなんでも買える。人々が店先に集まり、なんとも賑やかでる。
人の数もまったく違う。この都市には一万人以上が住んでいると聞いた。
もちろん王都と比べると、はるかに小さいが。
この都市には見上げるような建物は存在しない。
それでもこの都市はヴィクトリア村の目標となるだろう。
これほどにまでに村が発展をする日がくるのだろうか。
俺としては、発展してもらわなければ困るのだが。
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