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第六十三話 見送り

 俺たちパーティーは四人目の仲間を迎えに行くことになった。

 正直なところ俺自身はまだ不安が残っているが、ここは信じるしかなさそうだ。

 


 村の中央。

 

 見送りには村人全員が集まってくれていた。

 ……。いや、全員とか必要ないだろ。

 村を建設する作業はまだまだ残っている。まさかサボるための口実として見送りにきたのではあるまいな。



 鳥使いのリーダーによると、目的地はこの地方最大の都市のようだ。

 移動に二日。往復で四日。四人目の仲間を迎えにいくだけなら、一週間もかかないだろう。それなのに明らかに大げさである。




「いいですか。都市に行ったのなら、ちゃんと勉強してくださいよ。ぼーとしていたら駄目ですからね。この村で役に立つ知識を持って帰ってくださいよ」



 この村最強の五歳児、ヴィクトリアちゃんに説教されている。

 なぜ、説教されているだろう。なにも悪いことはしていないはずだが。



「それとこの村の皆さんに迷惑をかけるのですから、絶対に目的を果たしてくださいね。逃げ帰ってきたら承知しませんよ」


「大丈夫さ。私とアランがいるんだもの。絶対に成功するよ」


 セリシアはこれから空を飛ぶというのに、余裕の態度である。

 エルナは自慢の猫耳を振るわせておびえきっているのに。なんとも両極端な二人である。



「セレシアさん! あなたが一番心配なのですよ。 落ちていたものを食べないでくださいね!!」


「おやおや。手厳しいね。口を挟んだのは失敗だった」


 やっぱり最強。

 この村ではセレシアに勝てるのは、ヴィクトリアちゃんしかいないかも。



「こらこら、ヴィクトリア。アラン君を困らせるんじゃない」


 父親であるカストロがうしろから抱きかかえる。

 ヴィクトリアちゃんは抱えられたまま手足をバタバタさせる。


「でも! 空から落ちたら死んでしまうのでしょう!?」


 

 なんだ。心配してくれていたのか。

 ヴィクトリアちゃんは強いし、優しい。さすが将来この村を背負って立つだろう子供である。


 俺はヴィクトリアちゃんの頭をなでる。


「必ず帰ってくる。約束するよ」


「あなたが帰ってこないと、この村は滅びてしまいます。それを忘れないでくださいね!」



 現実的だなぁ。

 よくみると、ヴィクトリアちゃんはちょっぴりなみだ目になっている。

 本気でこの村の将来を思っているのだ。そこに俺たちが欠かせない人間として入っているのは、嬉しいことではあった。



「わかった。心に刻んでおくよ」


「絶対ですよ」


 ヴィクトリアちゃんはカストロに抱えられたまま、この場を離れていく。

 お土産にお菓子でも買って帰ろうか。この村ではまだまだ甘いものは少ない。喜んでくれるだろうか。それとも子供あつかいするなと、説教されるだろうか。





 村人たちも口々に俺たちをはげましてくれる。


「アラン君! 無事を祈っているよー!」


「また一緒にやきゅうしようね!!」


「モンスターのことは俺たちにまかせておけ! ちゃんと教えられた壁を作っておくよ!」



 いろいろと不足している部分もあるが、間違いなくいい人々だ。

 追放されてこの村にきた。けれども今ではこの村をきてよかったと思っている。



 苦労したけど。

 これからも苦労するだろうけど。





 一人だけ、必ず出発する前に言葉をかけておかなければならない男がいた。


「ガストン。村のことをよろしくたのむぞ」


 猟師のガストン。

 俺たちがいなくなったあと、モンスターを倒せるのはこの男くらいであろう。

 体が大きいし、ひげ面。人ごみの中でもすぐに居場所がわかる。



「ああ。まかせておけ。いくらモンスターと戦うのが嫌いでも、冒険者がいなくては戦うしかない」


 鼻を鳴らす。

 ガストンの弓の腕前は一流だ。ラージラビット程度ならば簡単に倒せる。

 他の村から冒険者がこない場合、この男だけが頼りだ。


 ガストンはふところから紙を取り出す。



 やれやれ。

 またか。



 言葉出さずとも行動で理解できた。

 実はカストロやガストンだけではない。結構な人数におつかいを頼まれた。



 はぁ。

 これも『ゆーちゅーばー』などという変な職業の宿命か。



「そのかわりに酒を買ってきてくれ。高いものがいい。儂は味にはうるさいからな」



 モンスター食を追い求める男が何をいう。


 まあ、いい。まとめて面倒みてやるよ。


 俺には金などあまり意味を持たない。

 が、村が発展することは元パーティーに復讐するためには必要である。



 紙を受け取る。

 ガストンが目だけで笑う。



「とびっきりの奴を頼むぞ」



 ふーむ。

 こうなったら最高級の酒を買ってやろうか。

 この男が飲んだこともない酒だ。


 なんだか。

 ガストンが驚く表情をみたくなった。


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