第六十二話 外への準備
リーダーの男は鳥使いの群れへと帰っていった。
俺たちは決断を迫られている。
この村に残るか。四人目の仲間をむかえに行くか。
さて、どうするか。
「エルナ。お前はどう思う?」
「あっ! あっ! ボクたちあの大きな鳥に乗るのですかね!? む、無理ですよ!」
エルナはその辺りをぐるぐる走り回っている。
うん。話にならない。
そりゃ俺だって空を飛んだことはないけどさ。平民どころか貴族にだって、経験した奴はほとんどいないと思うぞ。
「セレシアは?」
「行くしかないだろうね」
お手上げ、とばかりにセレシアが肩をすくめる。
「これだけの大金を使って、私たちを呼びだしたんだ。断ったところで、あきらめるはずがない」
確かにそうだ。
すでに豪邸を買えるほどの金がかかっている。断れば次の手を打ってくる可能性が高い。そうなれば、この村に迷惑がかかるかもしれない。それは避けたい。
かといって簡単に相手の思惑に乗るのも腹が立つ。そもそも敵か味方かさえわからないのだが。
いや、その前に俺たちがこの村を離れることができるのか。
辺境の村であり、冒険所は俺たちしかいない。物理的に村を出るのは不可能なのでは。
その時、人ごみの中から村長のカストロが出てきた。
しばらく周辺の村との交渉のために不在だったのが、村に帰ってきたのだ。
「ええ!? なんだ! この大きな鳥は!?」
遅いぞ。
何もかもが。
とりあえず話し合いのために、場所を移すことにした。
鳥使いの集団はまだ村の中央に陣取っている。そこで俺たちの決断を待つ気のようだ。
相談を聞かれるのは良くない。これから敵になる可能性だってないわけではないし。
そこで俺たちの家に村長カストロと共に戻ってきたのだ。
「はぁ。なるほど。わからないということがわかったよ」
カストロは困惑したように首を振った。
まあ、そうだろうな。俺たち、いや誰にもこの状況を説明できない。
思うのだが。この村。
想定外のことが起きすぎじゃないか。なんだ、呪われているのか?
「私としては、行くしかないかないと思うのだけど」
セレシアは積極派であった。
行かなければ、さらなる苦労が待っているだろうと。
「新しい服も買いたいしね。あと下着も」
……。買い出しに行きたいだけかよ。
ちょっと見直して損してした。
空を飛ぶというだけでかなりの危険が待っているのだぞ。
「そ、それは困る。君たちがいないとモンスターが」
やはりそこが問題である。
この村の周辺にはラージラビットが多い。あれは素人が戦うには荷が重い。
それに加えて、未知のモンスターが現れないとも限らない。
やはり無理か。
となると他に手は……
「……いや! ここは僕が頑張る番だ! 君たちは心置きなくこの村を旅立つといい!!」
カストロが立ち上がり、両手で俺の手を握る。
ちょっとだけ涙ぐんでいる。
え?
いきなりどうした?
「これまで君たちには散々お世話になった! これからは僕たちが恩返しをする番だよ!」
「え? いや。それほど世話をしたわけでは」
「いいや! 踊って村を救ってくれたし、この前だって領主とのコネを作ってくれた。これからの村にどれほど貢献したことか。感謝してもしきれないよ!」
踊りはともかく、テオドールとの勝負は偶然の産物だ。
それにテオドールと知り合ったからといって、領主とのコネになるかは微妙だ。人望さなそうだしな。
それよりも俺としては、日々の作業を評価して欲しかった。
あれこそが村への貢献であると思うのだが。未だに作業で事故が起こってないのは、地味だがすごいことなのだぞ。
「俺たちがいない間、具体的にモンスターをどうするのですか?」
「だてに僕も周囲の村を回っていなかったよ。最悪、他の村から冒険者を派遣してもらうさ。君に踊ってもらった金がそれなりに残っているし」
うーん。
そんなにうまくいくかな。
こんな何もないところにきてくれる冒険者がどれだけいるのか。
破格の報酬を出せるわけでもないし。
しかし、だ。
その一方で村人たちも、ほんの少しはたくましくなっているのも事実である。
最初のころのように、ゴブリンをみて逃げ回るようなことはないだろう。頑張れば討伐は無理でも、ラージラビットから村を守るくらいはできるかもしれない。
あんまり何でもかんでも俺がやるというのも、違う気もするし。
今回のことは村人たちの成長の機会ととらえていいのかもしれない。
そもそも四人目の仲間をむかえに行くだけである。
往復の時間を加えても、それほど長時間留守にするわけではない。
「留守の間は僕に任せてくれ! そのかわり……」
ん?
「ちょっと買ってきて欲しいものがあるんだ」
テオドールは一枚の紙を差し出した。
びっしりと文字が書かれている。読めん。文字自体は読めるが内容が難しすぎる。
「これは?」
「……村人たちに買えと求められている本のリストだよ。やっぱり学者たるもの最新の情報を頭に入れなければいけない。それでこそ進歩が望める」
なるほど。
この村は孤立している。
セレシアのように、買い出しをしたいという欲求が村人たちにもあったわけか。
だが本というものは高い。それも学者が求めるような本はなおさらだ。
しかもこの量。運ぶのも大変だぞ。
「金はどうするのですか?」
「それはそのぉ……君の『ゆーちゅーばー』で何とかならないかな?」
あー。なるほど。
交換条件ということか。
ただでは転ばない。
カストロも少しは村長らしくなってきたのかもしれない。
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