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第十八話 村人オーディション!!

 セレシアが暴走して、撃沈した。

 地面に倒れた姿をみても、どうにも同情心がわかない。

 自業自得だ。


 エロで金をとろうなんて、どうかしているぞ。



 気を失ったセレシアを抱き起す。

 頭を打っているが、死にはしないだろう。

 俺の職業を悪用しようとしたから死んだなんて、寝覚めが悪すぎる。


 俺のためにがんばってくれたことだけは、感謝しておこう。




「うわぁ!? 今、どうなったんだ! 空から鍋が降ってきたような。セリシア君は無事かい!?」


 カストロが大声でわめく。

 無理もない。むしろ落ち着いている俺の方が変なのかもしれない。

 そりゃ、空から鍋が降ってきたら驚くわな。



「大丈夫でしょう。しばらくしたら起き上がれると思います」


「ほ、本当か!? すごい音がしたが……」


 「ゆーちゅーばー」は俺の職業である。

 初めて知ることばかりだが、本能的にわかることもある。



 かめらを手に取る。

 表面に<エロは禁止です。子供にもみせられるような動画をお願いします>という文字が浮き上がっている。

 

 どうやら送る風景にも制限があるようだ。

 まあ、無制限に大金を得るなど都合がよすぎるか。



「このかめらをみてください。これで風景を送ることによって……」


 カストロに「ゆーちゅーばー」について説明する。

 セレシアが失敗したことも。いまだに不確定要素が多いことも。


 

「……なるほど。そういうことだったのか。」


 説明を聞いたカストロが考え込む。

 なにやら下を向いて、ぶつぶつとつぶやいている。


「実に…。実に……」


「やっぱり「ゆーちゅーばー」で五十万ゴールド稼ぐなんて無理ですよね」


 自分の職業ではあるが、あまりにも不確定要素が多すぎる

 そもそもこれまで稼いだ金額を合計しても、一万ゴールドにも満たない。

 それを三日で五十倍とは。不可能とは言わずとも、不可能に近い。


 俺としてはこんな変な職業ではなく、冒険者として金を稼ぎたい。

 例えば賞金のかかったモンスターを倒すとか。そうすれば冒険者のランクも上がって一石二鳥……。



「実に……。面白いじゃないか!!」


 カストロが顔を上げる。

 満面の笑みだ。さきほどまでの苦悩の表情がどこかに吹き飛んでいる。



「…っ!?」


「これは面白い! 学者としての血がさわぐな!!」


 

 いや、今は学者よりも村長としてがんばって欲しいのだが。

 


「ちょっとそのかめらを貸してくれないか?」


 貸すけど。

 貸すけど……さぁ。


 セレシアといい、カストロといい危機感が不足しているんじゃないのか。

 村の存亡の瀬戸際なのだぞ。本当にわかっているのか。

 もしかして心配しているのは、俺一人か?



 カストロは色んなところをかめらでとっている。足元に5ゴールド硬貨が落ちてくる。

 その表情はまるで子供がおもちゃをもらった時のようだ。

 

「素晴らしい!!」


 何が素晴らしいのか。さっぱりだ。

 ああ、この村は上から下まで変人ばかりだ。


 「ゆーちゅーばー」のどこに変人を引き付ける要素があるのか。

 うーん。謎だ。



「アラン君。このかめらを貸してくれないか? 僕たちがこいつの可能性を研究してみるよ」


「かまいませんが」


 冒険者学園でも元パーティーでも俺の職業は評価されなかった。

 俺自身も誇りに思っているとはいいがたい。戦いでは役に立たないからだ。


 それなのに、セレシアもカストロも「ゆーちゅーばー」に好奇心を刺激されるようだ。

 

 それは、たぶん。

 俺は冒険者だ。冒険者として成り上がりたいし、元パーティーを見返したい。


 それでも世界は冒険者だけではない、ということなのだろう。



 カストロが村人の方へ走り出した。

 ほとんどの村人が学者である。新しい発見がみつかるかもしれない。



 忘れていた。

 ガストロの背中に向かって声をかける。


「カストロさん! あまり俺から離れるとかめらが消えますよ!!」





 すでに日は落ち、そこらでたき火がたかれている。

 この季節は夜でも寒くはない。



「ん? ここは……」


 ようやくセレシアが目を覚ました。

 ここは開拓された村にしては、治安のいい方だと思う。それでも用心はしなければならない。

 意識を取り戻すまで付き添うのが、仲間としての義務だろう。


「怪我具合はどうだ? 頭は痛むか?」


「ああ、そうか。私は失敗したのだね。まいったなぁ、あれだけ自信があったのに」


「いや、そうでもないぞ。あそこをみてみろ」


 指さした先には村人が集まっていた。

 夕方には村の名前で議論していたが、今は「ゆーちゅーばー」について議論している。

 つくづく学者というのは、議論が好きな人間だ。



「彼らが君の提案を引き継いでくれている。君の失敗は無駄じゃなかった」


「他の人にかめらを渡してしまったのだね」


 感謝するかと思ったのだが、セレシアは逆にむくれてしまった。

 単純なのか、複雑なのか。それとも俺が鈍感なのか。

 「ゆーちゅーばー」ごときで嫉妬されても困る。




 議論をしている学者たちからカストロが抜け出してきた。


「アラン君。やっと結論が出たよ」


「結論?」


 セレシアを看病している間に、学者の頭に鉄の鍋が落ちてくるのがみえた。

 あとは色々なものをかめらでとっていたが、5ゴールド硬貨の山が作られていただけ。

 ここからみている限り、あまり研究は進んでいないように感じたが。


「うん。かめらで送る風景だが、いろんな制約がある。その中でもっとも有望だと思われるのは、人間の芸だという結論がでた」


「芸? 大道芸とかですか?」


 王都の大通りでは大道芸をする人もいた。

 歌や踊り、詩を披露する芸人も。当然この村には大道芸人など一人もいない。

 

「芸か。学者には無理なんじゃないのかな?」


 セレシアのいうことは、もっともである。

 冒険者も学者も芸には向かない。


「そうとは限らないよ。素晴らしい芸を隠し持った住人がいるかもしれない」

 

 カストロは大きく息を吸った。




「だから住民オーディションを開催することにした!! 君たちも協力してくれ!」

ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

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