第九話 理由なんてない
学校が終わって、みんなが教室を出始める
俺はランドセルに荷物を詰め込んでひとつ大きく深呼吸した
「よしッ」
ソラは空を眺めていた
誰かを遊びに誘うのってこんなに緊張したっけ?
そう思いながら、俺はソラに声をかけた
「よお。俺たちも帰ろうぜ」
声が震えた・・・
ソラは不思議そうに俺を見ながらうなずいた
教室を出てげた箱へ向かう
ソラは俺の後ろを歩いていた
いろんな人が俺らを見て驚いた顔をしている
俺は恥ずかしかった。こんなに注目されることなんてなかったから・・・
まるで、全校朝会で作文を読んでるやつみたいな感じだ・・・
俺らはただ無言で歩いていた
俺は耐えきれなくなって適当に話をした
「俺は桐沢 翔。って知ってるよな!俺のことはカケルって呼んでいいぜ」
「ああ、うん。」
「なぁお前のことさ、ソラって呼んでいいか?」
「ああ、いいよ」
「ソラさ、今日給食食べてなかっただろ?お腹すいてねぇのか?」
「ああ、別に」
さっきからソラは「ああ・・・」としか答えない
俺らはとりあえず公園のブランコに座ることにした
すると、今度はソラが話を始めた
「なぁ。カケル・・・はさ、なんで俺と遊ぶんだよ?」
「えっ?」
「だって、知ってんだろ?俺と絡むとろくなことが起きないって・・・それに、お母さんに怒ら
れるんじゃねーの?」
「なんで?お前と遊ぶと怒られんのか?お前、言ってる意味わかんねぇよ」
「やっぱり変だ。だって、俺と遊ぶなんておかしい。俺皆に嫌われてるんだぜ?」
「だから?」
「だから・・・」
「要するに、ソラは俺と遊びたくねェってことか?」
「違う!そんなんじゃ・・・ないけど・・・」
「じゃあなんだよ」
俺ははっきりしねぇことが嫌いだ。イライラしてきて口調が荒っぽくなってきた
「俺は、カケルに誘ってもらえてうれしかった。すごく・・・すごくうれしかったんだ。」
「じゃあそれでいいじゃん。」
「えっ?」
「うれしかったんだろ?周りのことなんかどうでもいいじゃねーか。俺らがいいなら、俺らが楽しいならそれでいいんじゃねェのか?」
俺はそのまま続けた
「親に怒られるだのろくなことが起きないだのウルセーんだよ。俺は、俺がお前と遊びたいと思ったから今こうしてるんだよ。他のやつらが何いってきても関係ねー。親に怒られたっていい。だから、そんな難しいこと考えんなよ。なっ!」
そう言って俺はニシシっと笑った
するとソラは初めて俺の目を見て笑った
その目に涙がたまってた。でも俺は気にしなかった
だってそれはきっと、うれし涙だから