表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
sky-そら-  作者:
6/31

第六話 『うれし涙』

やっと山頂についた

そこから見える光景は絶景だった

ここは、ちょっとした遊具が置いてあり、とても広いグラウンドがある。

ここで、やっと昼食だ


「はーい。ここで昼ご飯を食べるぞ〜。」


そう言うとみんな、友達のところへ行って、シートを敷き始めた。親もそれについて行って、親同士でのおしゃべりが始まった。

俺はソラを探した。

でも、どこを探してもいない。

公園の看板の下。トイレの裏。グラウンドの端。

探してみるがやっぱり、ソラはいない。すると、さびているブランコの「ギ―」という音が聞こえてきた。

行ってみると、そこにはソラがいた。

学校でもいつもブランコに乗っている。

それも、一つしかないブランコに…

二つ並んでいるブランコもあるのに、ソラはいつも一つしかないブランコに座っている。

こぐわけでもなく、ただじっと座って・・・


「よッ、ソラ。」


「イツキ先生……」


ソラはまたうつむいていた。ソラの髪は銀色のなかに黒色が混ざっていて、太陽の光をうけるとキラキラ輝いた。


「ブランコ好きなのか?」


「まぁ」


「弁当は?」


「ない。」


「持ってこなかったのか?あれだけ持って来いって言ったじゃないか?」


「買ってくる時間がなかったんだよ・・・」


するとソラのお腹から”グー”という音が聞こえてきた。


「ほれ。」


俺がおにぎりを差し出すと、ソラは水をやった時のように驚いていた。


「くれんのか!?」


「ああ。コンビニのだけどな?ほら、食え!」


すると、ソラは少し戸惑いながらもおにぎりを複雑な袋から出して

一口食べた。

そしてまた一口。一口と…

半分くらい食べるとソラは口を開いた。


「なぁ。イツキ先生?先生はどうして俺にいろんなものをくれるんだよ?ほっとけばいいに…」


俺は返事に困った。

お前がかわいそうで、見てられなかった

なんて言えない。だって、俺ら大人がソラにこんな苦しみ与えていたのだから・・・


「なんでだろうな・・・?」


あいまいな返事をしてしまった。


「今までの先生達は、俺に目も合わせてくれなかった。給食だって、みんながつぎ終わってから

 俺が最後に残ったものをとるんだ。時々残ってなくて、食べない日もあった。だからさ・・・

 イツキ先生がおにぎりくれて、やさしくしてくれてすごくうれしいんだと思う。なのに・・・ なのにさ・・・」


ソラの目からは涙があふれていた。


「どうして涙が出るんだろう・・・?悲しくなんかないのに・・・どうして・・・」


俺はそんなソラを抱きしめた。

ソラは声を必死にこらえながらわずかに震えて泣いていた。

だが、次第に嗚咽が漏れだして大きくふるえながら泣いた。


「ソラ・・・その涙はな、悲しいから出てるんじゃないんだぞ?それは、『うれし涙』って

 言うんだ。」


「うれし・・・涙ッ?」


「ああ。そうだ。うれしくてたまらないときに出る涙なんだ」


「ははッ。そっか。俺って今うれしいんだ。」


そう言うとソラは満面の笑みで笑った。

笑った顔はどこかあどけなくて、やっぱり子供だった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ