第十九話 出会い
みんなが帰ったのをしばらく見送って空もマンションに向かって歩き出した。
しばらく歩くと街灯がつきだした。
周りの家からは楽しそうな声が聞こえてきた。
息をはくと白く、風が冷たくなった。
もう少し歩くと、商店街が見えてきた。
夜になってもにぎやかだ。
屋根が付いていてあかりがたくさんついている。
昼に通る時とは違って、きれいにデコレーションされたみたいにきれいだ。
空は、初めて夜の商店街を通ったので、見とれた。
そこを抜けるとまた暗い住宅街に出る。
いきなり風が吹きつけてきた。
「本当に春になったのかよ?」
そう思うほど夜は寒くなっていた。
しばらく歩くと、また公園があった。
その公園を通ると近道になる。
公園に入り歩いていると、ブランコに誰かが座っていた。
この公園は土地がせまく、遊具も少ないため、横切るために通る人以外
誰も入らない公園だ。
「誰だろう・・・」
通り過ごそうと思った空だったが、その人が震えていることに気付き、心配した空は
話してみることにした。
「あの、大丈夫?」
「…ああ。ごめんね」
顔えおあげた人の顔はしわでたくさんの男の人だった。
しばらく空の顔を見た後、にっこりと笑った顔には、さらにしわがふえた。
「寒くねーの?帰れば?」
「そうだね…。でも、帰るところはなくなってしまったからね。」
「なくなった?どうして?」
空は、おじいさんの隣に歩み寄り、ブランコに座った。
「昔、この国の長を含む一族が暗殺されたことがあるのは知っているかい?」
「ああ。知ってる。もうすぐで10年だから長が変わるんだろ?」
「そう。私はその一族に従えていたんだよ。」
「へぇ~。じゃあんたも裏切り者の仲間だったってことだな」
「そうだな。でも、違う。長は裏切ってなどいない。むしろ裏切ったのは酒井の方だ。」
「えっ?どういうことだよ。それ」
「いいや。ここまでにしておこう。この話は本当はしてはいけないんだ。」
「ここまで言っておいてそれはねぇよ。」
「ごめんね。忘れておくれ。」
「でも。」
「早くお家に帰りなさい。お母さんが待っているよ。」
「待てないよ。俺の家は空っぽ。」
「一人ぼっちなのかい?」
「そーだよ。」
「そうか…さみしくないのかい?」
「じいさんこそ。さみしくないの?」
「さみしくないと言ったらうそになるからね。さみしいよ。とても…」
「そっか…」
「私はね、もし生きていたら君と同じくらいの年になる長の子供のお世話係をしていたんだ。」
「ふーん」
「今日は君と話せてよかった。今日は寒いからね。早く帰りなさい。」
「じいさんは?」
「私は、大丈夫だよ。」
「そっか。じゃ、バイバイ。」
「長…酒井のたくらみは私が壊して見せます。どうか、空様と見守っていてください。」