第十四話 雨のち晴れ
目覚ましがなる
目をかすかに開けると太陽の光が差し込む
重い体を動かして洗面所に向かう
顔を洗ってパンを食べる
そして歯磨きをして学校へ行く
何も変わらない朝
何も変わらない俺
でも、一つだけ変わった
空はいつものように通学路を歩いていた。相変わらず、町の人たちからの視線は痛い。でも、そんなのは空にとっては当たり前。でも、そこを抜けるとさらに視線が刺さる。そこは学校だ。でも、それも空にとっては当たり前。そこを抜けると今度は教室だ。そこに入るとにぎやかな教室は一瞬にして静まり返る。そして、みんなの視線が刺さる。それが空にとっては普通だったから別に気にしたことはなかった。今日もまた、その当たり前の今日に向かって歩いていた。ドアを開けると教室は静まりあえり、みんなの視線が刺さった。でも、今日は違った。その静まり返った教室に
「おはよう。空」
という声が響いた。その声の主は、
「・・・おはよう。翔・・・」
そう。昨日、友達になった桐沢翔だ。
クラスの人の視線は空から翔に移った。すると、二人組が教室の中に入ってきた
「おはよう。翔。空」
「ふぁ〜。はよー」
そう。この二人組も昨日友達になった横木雄大と比良元辰哉だ。
クラスの人は、いつもの当たり前の光景ではない出来事に騒ぎ始めていた
「はよー。雄大。辰哉。てか、辰哉。お前その挨拶こっちが眠くなんだけど…なぁ空」
そう言って、空の方を見た翔は眼をギョッとして驚いていた。そして、その表情を見た辰哉も驚いていた。
「おっおい。泣くほど俺のあいさついやだったのかよ」
空は、目から涙を一粒、また一粒とこぼしていた。
これは、きっとあの時と同じ。
そう、乙樹先生に教わった、あの
『うれし涙』
「ううん。おはよう。辰哉。雄大」
そういった空の顔はとても晴れ晴れとして、さわやかで、クラス中の人々が空に見とれた。
「今日の空は快晴だな」
そういった翔の言葉でクラス中が笑顔に包まれた
この日から、教室で空に対してとげのある視線を送る人はいなくなった