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週末  作者: 永井有実
3/4

佑太朗 1


 枕元の携帯で時間を確認する。

 午前十時半。

 安アパートのこの部屋は東向きで、朝日で目覚めることが多い。

 いぶかしんで外の気配を感じると、どうやら雨?もしくは曇りの模様。隣で真唯子(まいこ)は穏やかな寝息を立てている。

 少し瞼は腫れている模様。

 寝顔を見つめると、気配を感じたのか寝返りをうって僕に背を向ける。背中から抱いて、お尻のあたり、密着させる。

「やんないよ」

 軽く振り払われた。

 ――ちぇ。

「起きた? 天気悪いみたいよ」

 ベッドから起き出して、薄暗い部屋の電気をつけた。カーテンをずらして外を覗くと小雨が降っている。今日は一日引きこもりで決定かも。

 真唯子を振り返ると、すっぽりと布団に包まれていた。

 電気をつけて眩しかったから?

「真唯子?」

「――もぅちょっと」

 かろうじて声が返った。部屋の電気を消す。

「どこ行くの?」

 トイレに向かおうとしたら、声がかかった。

「トイレ」

「ん~」

 聞こえた返事はそのまま寝息にかわりそう。トイレを済ませたら、真唯子の横で二度寝することに決めた。


 二度寝から目覚めたら、二時をまわっていた。

 僕より先に真唯子が起き出していて、着替えを終わらせている。けれど、瞼は腫れたままだったらしく眼鏡をかけ、長い髪を無造作に一つに束ねて、化粧もしていない。

「雨、やんだみたいよ」

「でかける?」

「ん、図書館、行きたい」

「図書館?」

「この間、見つけたの。新しいのかな? 比較的、きれいだったよ」

 真唯子は背負える鞄を用意している。

 自転車、ニケツで出かけるつもりらしい。鞄にいつものエコバッグを詰め込んでいる。

 僕も鞄から服を取り出して、着替える。昨日洗濯してもらったのは、まだ乾いていなかった。

「――?」

 洗濯物を気にしたから、真唯子は何かを言いたそうだ。たぶん、いつまでいるの?とかそういったこと。

 でも聞かない。

 彼女には今は新しい恋人がいて、でもちょっと事情が複雑らしいことしか知らない。僕がこうして泊まりにくることは黙認か内緒なのかも知らない。

 真唯子の傍は、僕の避難所なんだ。

「おなか、まだ大丈夫? 本借りたら、ゆっくりお茶こみで何か食べよう」

 真唯子の提案に頷く。彼女の聞き方はいつでも優しいと思う。玄関で自転車の鍵を手にする。

「道、教えてね」

「ん。区役所の辺」

「遠くない?」

 かるく一駅分はあるんじゃないか。

「だめ?」

「じゃないけど。どうぞ」

「ありがと」

 後ろに座るようにすすめて、まだ少し雨の匂いがする中、僕は自転車を漕ぎ出した。




  

 


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