61 俺たちの戦いはこれからだ!1
61 俺たちの戦いはこれからだ! 1
服を脱いで、バッテリー液と少しのボディーソープを水で薄め、薬品コーナーにあったクエン酸を混ぜて、体を洗った。
落ちた汚れで足元がドロドロになった。
そんな暇はないだろうと言ったが、妹に押し切られた。
なぜか妹には確信があったので、従った。
それから新しい服を着て、妹に血を取られた。
ナツリンに与えるらしい。
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なんだか色々聞きたい事はあるし、妹も言いたいことがあるみたいだが、
「つもる話は後だ。あれが何なのか、お前達はわかるか?」
妹はナツリンと委員長に血を与える間、俺を部屋から締め出していた。女の子のなんとかかんとかがどうたらこうたらとか。
ともかくそれは終わったらしく、俺も部屋に入った。
ホームセンター二階のスタッフルーム。
俺が数日寝床にしていた場所だ。
ナツリンはソファで眠っている。
命に別状は無いらしいが、結構血を流してしまっている。休んでいた方がいい。
側には委員長が付いている。委員長はナツリン程出血していないが、それでもだるそうだ。
「やっと再会したってのに。お兄ちゃんは変わらないね。
…… あれは、多分ゾンビを操ってた人達だよ」
「ゾンビを…… 操る?」
「うん。ちょっと特殊な低周波装置でね。操るっていうか、追い込むっていうか」
「…… まて、人達って、奴以外にも居たのか?」
「うん。道の北側には、2人。南側に1人。
銃声の方向でだいたいわかった。まだ隠れているかもしれないけど、最低3人、銃を装備している人達がいる」
妹の感の良さは昔からだが、ここまでくるとちょっとおかしい。
人一人を抱えて走りながら、銃声を聞き分けて射手の位置を特定していた? 超人か?
「あいつ…… あいつらは、来るか?」
「今日は多分来ないと思う。もう太陽傾いてきてるし、それに……」
妹の言葉を遮って、外からノイズの様な音が聞こえてきた。
「なんだ?」
「多分、ゾンビを集めてるんだよ。全部ころしちゃったからね」
だめだ。よくわからん。
しかし、すぐに来ないというなら準備ができる。
「手伝ってくれ。作業しながら話そう」
「うん」
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「なんだよ…… お前が主人公だったのか」
「ナツリンにもそれ言われた」
妹はいつのまにか人間やめてたらしい。
色々凄い妹の話で何度も道具を取り落としそうになった。
「だから、俺の血か」
「うん」
彼女たちはゾンビ虫に感染していない。
妹は一度感染しているものの、変化した免疫系でゾンビ虫は排出されてしまっている。
この中でゾンビ虫の卵を持っているのは俺だけだった。
「じゃあ、ナツリンや委員長も変化するのか?」
「うん。でも、ゆっくりだから、戦う事はできないと思う。
大怪我しちゃったから、念のためにってだけだし」
「……お兄ちゃん、ナツリン、って呼ぶの、直ぐに慣れたね」
「本人がそう呼べって言ってるしな」
「ねぇ、ナツリンどう思う?」
「どうって言われても…… なんだよ?」
「美人だよね。おっぱい大きいし」
妹の言葉にうっかりスコップを落としてしまった。
ホームセンター1階に少し音が響く。
「おっぱいの話とか妹の口から聞きたくないよ。どうしたんだよいったい」
「委員長も、超、超、超、美人さんだよね。めっちゃ雰囲気あるよね」
「ああ、そうだな。美人だ」
「委員長どう思う?」
「だから、なんなんだよ……」
妹は昔からこういう変な事を聞いてくる事があった。
いったいどうしたってんだよ。
「お兄ちゃんは? 今までどうしてたの?」
「………… えっと…… 」
俺はなるべく簡潔に、これまでの事を話した。
俺がやってた仕事の事。
俺が殺したゾンビの事。
俺が殺した人間の事。
妹は、俺の話を黙って聞いていた。
「あの時、お前が後ろを守ってくれてさ、凄く、嬉しかった。
俺は色々やっちゃったけど、今度は、お前達は、絶対に守るよ。
俺おかしくなっちゃったけど、殺す事しかできないクズになっちゃったけど、でも、それでも、お前達の事は絶対に……」
がん、と、尻を蹴られた。
妹はたしかに強くなっているらしい。
記憶の中の痛みより数倍痛い。
「お兄ちゃん。守ってくれるのは嬉しい。凄く、嬉しい」
妹は、ニッコリと、怖い笑顔で俺を見下ろしていた。
「だけどね、お兄ちゃんの話の中に、私を怒らせる部分が含まれていました。
さて、それはどの部分でしょうか」
懐かしい。昔もそんな風に問い詰められた事が何度もあった。
でも、
「どの部分って…… 」
俺が答えられずにいると、また蹴られた。
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