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外伝4 外伝最終回

59x 外伝5 外伝最終回



 田舎…… というか、郊外の土地を贅沢に使ったスポーツ施設。

 小さめの体育館は、でも中央で試合をやるには十分な観客席付いてるし、三階建ての武道棟というのがあって、二階三階は壁の一面が鏡張りになってた。

 自分たちの姿に一喜一憂。

 

 小さめの球場も観客席は広かったので、日常的に使うものじゃなくてなんかイベントや催し物を目的に作られているのかもしれない。

 運動場はただの草むらになってた。

 やっぱりススキは凄い。

 そんなに栄養豊富とも思えない運動場の土で、子供ぐらいなら埋もれて見えなくなりそうなぐらい育っている。

 コンクリートで作られた観客席がただの草むらを見下ろす感じになっていてちょっと面白かった。

 

 となりに小さなコンビニ、そのとなりに巨大な駐車場、そして、ホームセンター。

 あのホームセンターも結構大きいけど、このスポーツ施設の大きさで霞んでいる。

 ホームセンターが一番離れているのは、肥料とかそういうものを扱ってるからだろうか。

 こっちから見える駐車場側にはこれまた大きな園芸コーナーがあるし。

 双眼鏡で覗いてみたけど、プランターや鉢植えのいくつかは枯れてて、逆にいくつかが凄く育ってた。

 放置に向いてる植物とそうじゃない植物があるんだろう。

 

 私たちはこのスポーツ施設でしばらく生活している。

 

 めちゃくちゃ広くてこの施設内だけでも物資が大量にある。

 あのホームセンターから向こうはしばらく山道で、なんだか進むのがちょっとおっくうだったせいでもある。

 

 自販機とかは壊されてたし、剣道場の鍵は破壊されて中身が持ち出されていた。

 竹刀でゾンビと戦うなんて無理だと思うけどなぁ。

 木刀とかもあったのかな?


 空手道場兼柔道場は、何か壁にかかっていたものが剥がされた形跡が結構ある。

 

 道場棟の一階にある医務室は棚の中のものがゴッソリ無くなっていた。

 

 陸上競技の備品倉庫が開いていたけど、何が無くなっているのかよくわからない。

 投げやりの槍や棒高跳びの棒って選手の個人的な持ち物のはずだし。

 ハードルとか円盤とか砲丸は残っている。

 多分野球のバットとかは無いんだと思う。

 

 体育館の備品室は特に取るものが無かった様で、壊されてはいるけど、中身はそのまま残っていた。

 ボールで少し遊んだ。

 

 こんなに荒らされてはいるけど、人が一人も居ない。

 籠城していた形跡も無い。

 動物の爪痕の様なものがちらほらある。

 どこも外気や光を取り込む様に作られているからかゾンビの巣にもなっていなかった。

 

 すごく良い場所。


 だけど、骨とか発見したら嫌なので、あまり細かく調べたりはしないようにした。

 

 室内には結構シミが残っていた。

 箱物施設以外は、すくすく育った雑草に覆い隠されているけど、もしかしたら茂みの中に色んなものが隠されているのかもしれない。


 □

 

 私たちは道場棟2階の空手兼柔道場に、医務室から引っ張って来たマットレスを敷いて、その上にカーテンを掛けて、寝床にしていた。

 

 この数日天気が悪い。

 なんだかじめじめする。

 

「今日も雨っすねー……」

 ナツリンがぼやいた。

 ガジガジとプロテインバーをかじっている。

 体育館入口の受付の机引き出しから発見したもので、賞味期限はとっくに切れていたがまだ食べられる。

 

 もってきていたアルミパイプは全部加工してしまった。

 道中集めたアルミ粉はマグボトル1本分になっている。大量だ。

 これに酸化鉄、つまり錆びた鉄粉末を混ぜるとテルミット薬ができる。

 雨で空気湿っているから、作業には向いていると思う。

 

 私と委員長、ナツリンもプロテインバーをガジガジ齧りながら、運動場とか色んなところから集めて来たサビだらけの鉄くずをガリガリ削っている。

 鉄の道具って、人間が手入れしなくなるとこうも簡単にダメになっていくんだなぁ。

 

 酸化鉄8対アルミ粉末2ぐらいで混ぜる。

 

 スポーツ施設内にいくつか落ちていたマグボトルを拾ってきていたので、それに詰めた。

 ボトルの大きさは不揃いだけど、合計で3本のテルミット弾ができた。

 使う事があるかはわからないけど、まぁ、用心するに越した事はない。

 

「おお、雨上がったっすー」

ナツリンが夕暮れの日差しの中で背伸びした。

おっぱいを、おっぱいを見せつけているのかっ!

羨ましい。くれとは言わん、もませろ!


「……むむ? なんか、ゾネさんがアッシを狙っている様な……」


 ナツリンセンサーまじ優秀。

 

 

 □

 

 

 翌日は朝から青空。

 天気が良いので、ホームセンターに行こうかと話をしていたら、

「あれ? 何か聞こえたっす。ゾネさん?」

「うん。私にも聞こえた。これ多分爆発の音だよ」


 3人無言で黙っていると、また響いてきた。

 

 それから、何度も。

 

「何か、近くで戦闘でもやってるんすか?」

「爆発物を使うぐらいの戦闘だったら、私たち早く逃げた方がいいけど……」


 なんだかよくわからない事態に、私たちは動けずにいた。

 その間も断続的に爆発音が聞こえてくる。

 

 少し話し合った後、身の回りのものを纏めた。

 逃げるにしても、逃げないにしても、すぐ行動に移せる様にしておいた方がいい。

 

 もう1時間か2時間ぐらい経っただろうか。時計見てればよかった。

 準備は20分ほどで終わったけれど、このまま逃げ出すか決められずにいた。

 このスポーツ施設から出たら、一本道だ。

 道を外れて草むらをかき分けて進む事もできるけど、周りに駐車場があるため、どうしても姿を晒す事になる。

 慌てて出て行くのは怖い。

 

 何が起こっているのかわからないけど、ソレがここから去ってくれるんじゃないかと少し期待しながら待ってみた。

 

 武装集団同士の戦いとかだったらさっさと逃げた方がいいけど……

 

 

「屋上行ってみよう」


怖いけど確認した方が良い。



 □

 

 

 私たちは武道棟の屋上に来た。

 外に出たらやたら臭くてなんかイラっとした。

「なんすかこれ。肥料のにおいがするっす」

ナツリンが泣きそうだ。


 一応双眼鏡持ってきたけど、確認の必要がないぐらいゾンビがいた。

 

「なんすかあれ。ぱんでみっく?」

 いや、3年前からパンデミックだからね。

 

 ホームセンターの向こうから、黒い波が押し寄せてきていた。

 あれ全部ゾンビだ。

 

 委員長はメガネをキュッとつまんで難しい顔をした。

 

「1000か……それより少し多いかな?」

 ここからホームセンターまでが駐車場入れても200mぐらい。

 ゾンビの波はさらにその2、30mぐらい先にいる。

 いちいち数えられないのでだいたいの範囲を見て計算した。

「でも…… ほとんど倒れてる。動いてるのは300かそれぐらい……」

バラバラになってるのとか、まだ痙攣しているゾンビもちらほらいる。


 どういう事?

 

 

 爆音が響いた。

「ゾンビが爆発してるっす」

 ナツリンの言う通り、ゾンビ達の先頭附近から爆煙が上がっている。

 爆薬? 地雷?

「あれって…… うぐっ!!」

 私は思わず鼻をつまんだ。

「ゾネさんどうしたっすか? ……んがっ!!」

 少し遅れてナツリン、そして、委員長も鼻をつまんだ。

 においが一層強くなった。

 なんていうか、これ、肥料? 

 

 爆発物仕掛けてたの?

 多分、材料の出所はあのホームセンターだろう。

 私たちが引っかかってたら危なかった。

 なんでそんなものをあんなところに置いておいたんだろう。

 ゾンビに対する備え…… なのかな?

 

「え? あれ……」

「どうしたっすか?」

 強化された私の視覚に、チラチラと動くものが見えた。

 なんだかドロドロな格好で、ゾンビと見分け付かないけど、動きがゾンビのそれじゃない。

 

 私は双眼鏡を覗き込んだ。

 

 ドロドロの血まみれ。

 だけどあれは返り血だろう。あと、返り臓物とか。

 フラフラしているけど、スコップや鍬で上手くゾンビを仕留めている。

 ゾンビを殺している。

 人間。

 

 転んでしまった。

 もう体力が限界みたいで、四つん這いになったまま動けないでいる。

 ドロドロだけど、短髪で、少しヒゲがある。

 あの背格好……

 顔……

 

「………… お兄ちゃん!!」


 私は駆け出した。

 


 □

 

 

「うええ? お兄ちゃん? ゾネさん!」


 ゾネさんが飛んでった。

 この武道棟3階建てなんすけど、そこらの出っ張りとかに手を引っ掛けながらパルクールみたいな動きで降りてった。

 ゾネさんまじパナイっす。

 

 あれ、あのゾンビに囲まれてるのが、ゾネさんのお兄さんすか?

 あんな大量のゾンビの中に? ナンデ?

 

 ゾネさんが置いてった双眼鏡を拾って見ると、

「あ、やばいっす!」

 ゾネ兄さん超ピンチっす!

 

 びゅん、と近くで音がして、ゾネ兄さんに襲いかかろうとしていたゾンビが倒れた。

 アッシは振り返った。

「委員長まじスゲー」

 賞賛の言葉とか自然に出てきたし。

 

 委員長は、ドヤ!とメガネを光らせた。

 ノリノリっすね。

 

 アッシは委員長のガード役。

 手にハンドメイドNAGINATA。そして、観察。

 

 ゾネさんあっという間にゾンビの群れに突っ込んでいったっす。

 200m何秒っすか。

 

 直前にポイポイ投げてたテルミット弾も、いい感じの位置に落ちたっす。

 

「眩しいっす!」

 思わず声を出してしまった。

 委員長もメガネを背けている。

 

 光が収まってきて、再び双眼鏡を覗き込んだ。

 戦っている。

 ゾネさんとゾネ兄さんが。

 お互いの背中を守りながら、ぐるぐる回ってゾンビを蹴散らしている。

 

 アツイ展開っす!

 

 

 

 ……だけど……

 

「委員長、あれ、見えるっすか?」

 委員長はメガネで頷いた。

 委員長はめちゃくちゃ目が良い。あのメガネに何か秘密があるはず。目が良いならメガネする必要ないわけだし。

 ともかく、

「ゾネ兄さんの動きが…… なんかおかしいっす……」

 アッシの意見に、委員長もメガネを光らせた。

 

 アッシも委員長も武道をやってたから、そういう動きはわかるっす。

 ゾネ兄さんはちょっと異常っす。

 めちゃくちゃ強い。

 あれだけ強い人間はゾネさん以外で見たこと無いっす。

 だけど、何か武道や格闘技をやっていた人の動きじゃない。

 それどころか、多分ゾネ兄さんは運動とか苦手っぽい。

 なのに、ゾンビとあんなに戦えてる。

 

 なんというか、あの動きは、先を読んでいる動きっす。

 ゾンビは人間と違う。

 その動きを全部読んでいる。

 

 どのゾンビが、どんな風に自分を察知しているのか、どのゾンビから先に襲ってくるのか、どうやって襲ってくるのか。

 飛びかかってくるのか、手を伸ばしてくるのか、噛み付いてくるのか、全部読んでる。

 

「ゾネ兄さん…… いったいどんだけゾンビと戦ってきたんすか……」


 ゾネさんが、お兄ちゃんはぼっちだって何度も言ってたけど、きっと一人で生きてるって言ってたけど、本当だったんすね……

 

 

 

 

 

 

 二人は300体ぐらいいたゾンビを殺しきってしまった。

 

「さ、委員長、行くっすよ!」

 委員長はメガネをクイっと上げて、アッシに続いた。

 

 まずは挨拶が大事っす!

 

 

 

 □

 

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