59 再会
59 再会
手斧が砕けた。
だが、その破片は確実に脳を潰している。
そいつが最後のゾンビだった。
長く使って来た手斧は、最後の最後まで、きっちり仕事をしてくれた。
もう一本は、ゾンビの血と肉片でグズグズになりながらも、まだ俺の手の中にある。
こいつには仕事が残っているのだろうか。
警戒しながら周りを見回す。
あれが最後のゾンビで間違いなかったようだ。
周りの道路が肉塊で覆われている。
うっすら腐臭がする。
バカになった鼻でこれだけ感じるんだから、よっぽどだ。
撒き散らかされた肉塊の中には、まだビクビクとうごいているものもある。
だがそのうち死ぬだろう。
やがて全てが死体に戻る。
もう襲ってくるものが無いと判断し、俺はゆっくりと振り返った。
後ろも大変なもんだった。
辺り一面赤黒いものが撒き散らかされている。
俺がやったものよりもずっと損傷がでかい。
千切れた手足や首がそこら中に落ちていた。
近くのホームセンターの前にも、首や手足が転がっている。切り裂かれてあんな所まで飛んでいったのか。とんでもない力だ。
俺の背後で戦ってくれたその人物は、両手に大きなククリ刀を持っていた。
だが、その両腕、体つきも、大型のククリナイフを振り回して戦うなんて無理としか思えないぐらいに細い。
そいつは女だった。
まだ若い…… というか、
「お前…… 」
そいつは、涙をこぼしながら、しかし、懐かしい笑顔で、
「やっと会えた! お兄ちゃん!」
そいつは俺の妹だった。
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