05 やっぱり居た
05やっぱり居た
俺は11階の角部屋にキャンプしている。と言っても全部角部屋だが。
夜。連中が活発に動き始める時間だ。
ふと、人の声が聞こえた。
音を立てない様に窓を開けた。
もともとはきっと綺麗な夜景が見えたのかもしれない。この辺は住宅街だからわからんけど一応13階建てだ。川向こうの繁華街の灯りが見えただろう。
今は真っ暗だ。
見上げれば星空が綺麗だが、地上と合わせてみるとこのマンションの下は真っ黒い闇の中。地獄の底に通じている様な気さえしてくる。
そしてそれは実際そうなのだろう。
声は、確かに上から聞こえた。
やっぱり居た。
こういう事があるかもしれないと思って中途半端に11階にキャンプしている。
そりゃあ、一番高い方が安心するよな。
今まで声を聞かなかった。
俺が気付いて無かっただけかもしれないが。
今まで何度もマンションの下を覗き込んでいた。奴らの警戒のために。うっかりしていた。上から頭を見られていたのかもしれないんだから。
というか、連中は人数が居るはずなのにマンションの周りの警戒とかしてなかったんだろうか。
良い方に考えるなら、連中は色々切羽詰まってきたって事だろう。
この世界で体調を崩す事は即、死につながる。
カップ麺やお菓子がごっそりなくなっていたので、仕込んで正解だった。
登山じゃないんだ。帰れるわけでもないのにあんなモノを毎日食べるなんて頭おかしい。そこに汚水を突っ込んでやった。
俺はだいぶ少食になった。
お菓子類もインスタント食品もほとんど食べていない。水の補給、サプリメント、後は自前で用意した食料でなんとかしている。
もともと周りから健康オタクとは言われていた。世界がこうなってから本気出した。
インフラが止まっている以上、衛生状態を良く保つには限界がある。
薬だって、自分の症状が何の病気か知識と経験も無い俺では断定できないからそう簡単に使えない。薬は病気の症状を抑えるが副作用もでるし、基本体のどこかを悪くするものだ。それを用法容量を知らん俺は使えない。
もちろん、衛生状態は気をつけるとして、一番確実なのは、自分の免疫力を上げる事だ。
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ジャンクフードに汚水を突っ込んで仕掛けるってのは初めてだったが、意外に使える。覚えておこう。
食い物がかぶらないならいいんじゃないかと昔の俺なら思ったかもしれないけど、そんな俺はとっくに死んだ。
生きているだけで駄目なんだ。
近い距離に生きている人間がいる。それはとてつもない脅威になる。