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46 都市の生存者達4

46 都市の生存者達4



 俺は、ショッピングモールから逃げた。

 連中が武装していたから、戦う事もしなかった。

 このホテルの連中は、居住場所が安全だからか日常的に武装する習慣が無かった。

 つまり、俺は、武装している人間からは逃げ、非武装の人間なら殺す。

 殺さなければいけない、というのも俺の個人的な判断だし。

 戦闘を避け、抵抗できなさそうなやつは殺す。

 自分を守るのであれば正しい判断だと思うが、やはり胸に引っかかるものがある。

 それでもやってしまったわけだけど。

 

 避難所、ショッピングモール、そしてこのホテルにも、色々と振り切れた奴らがいた。


 俺も同じなのかもしれない。

 

 

 □

 

 

 男達も女達も、次は俺が支配者だと勘違いしたらしい。

 それを違うと説明するのに時間がかかった。

 

 しばらくして、自分達が解放されたと知った男達は涙を零し、女達はさっそく俺に群がって来た。ウザい。

 病気とか勘弁してほしいし、あのDQN連中とは相容れない。あんなのと穴兄弟とか絶対に嫌だ。

 それに、そんな事より働け。

 


 □

 

 

「あんた、行くのか?」

 そんなわけで、俺はこのホテルを後にした。

 死体の処理をして、2日程滞在したが、出て行く事に決めた。

 

 やはり他人がいると安心して眠れない。

 あれだけの事をやっておいて結局立ち去るとか。自分でもどうかしていると思う。

 

 だけど、あの目だ。

 男達の目付きが少し変化している。

 俺は個室で眠っていたのだが、女達の様子もおかしい。

 少し怪我をしている女もいた。

 俺が知らない内に何かあったのだろう。

「あんたには皆んな感謝してるんだ。きつかったら戻って来てくれよ」

 と、男達が笑顔で俺を見送る。

 その笑顔はべったりとして気持ち悪かった。

 

 DQNに苛立って気付かなかったのか。

 彼らもまた、狂ってしまっているのだ。

 グシャグシャに潰れた紙は、元の様に広げても皺を消す事はできない。

 それを元に戻すための設備はもうこの世界に無い。

 カウンセリングも、投薬も、ゆっくりと時間を過ごす事も、全て不可能だ。

 

 次は俺じゃなかった。

 次は、彼らだ。

 

 相手は7人。

 俺が戦う所も少し見られている。

 敵対は危険だ。

 ここまでやっておいて、中途半端に俺は去る。

 

 俺は一体何をやっていたんだろうか。

 ただ死体を3つ積み上げただけで、何も変わらない。

 全ての始末を付ける事もできない。

 ただかき回して、逃げるだけだ。

 

 でも、もうこれ以上何もできる気がしなかった。

 力を合わせて生活する、なんて、やっぱり無理だった。

 俺は弱い。幻想にすがって、他人の生活をめちゃくちゃにした。



 □

 

 

 □

 

 

 □

 

 途中で雪が降る日があった。

 こんな所で立ち往生か? と思ったが、その日だけだった。

 それからしばらく晴れの日が続き、たまに雨が降った。

 

 俺は北上を続けた。

 

 今年中には無理だと思うが、まずは東北を目指す。

 人気の無い山道なら車でも大丈夫だろうか?

 自転車で日本一周した人間は、北に行くときどんな装備をしていたんだろう。

 

 わからない事ばかりだが、進むしかない。

 立ち止まったら後悔に引きずり込まれそうになる。

 

 また孤独な生活に戻ったけれど、俺はとてもとても安心していた。

 

 

 ◯

 

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