46 都市の生存者達4
46 都市の生存者達4
俺は、ショッピングモールから逃げた。
連中が武装していたから、戦う事もしなかった。
このホテルの連中は、居住場所が安全だからか日常的に武装する習慣が無かった。
つまり、俺は、武装している人間からは逃げ、非武装の人間なら殺す。
殺さなければいけない、というのも俺の個人的な判断だし。
戦闘を避け、抵抗できなさそうなやつは殺す。
自分を守るのであれば正しい判断だと思うが、やはり胸に引っかかるものがある。
それでもやってしまったわけだけど。
避難所、ショッピングモール、そしてこのホテルにも、色々と振り切れた奴らがいた。
俺も同じなのかもしれない。
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男達も女達も、次は俺が支配者だと勘違いしたらしい。
それを違うと説明するのに時間がかかった。
しばらくして、自分達が解放されたと知った男達は涙を零し、女達はさっそく俺に群がって来た。ウザい。
病気とか勘弁してほしいし、あのDQN連中とは相容れない。あんなのと穴兄弟とか絶対に嫌だ。
それに、そんな事より働け。
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「あんた、行くのか?」
そんなわけで、俺はこのホテルを後にした。
死体の処理をして、2日程滞在したが、出て行く事に決めた。
やはり他人がいると安心して眠れない。
あれだけの事をやっておいて結局立ち去るとか。自分でもどうかしていると思う。
だけど、あの目だ。
男達の目付きが少し変化している。
俺は個室で眠っていたのだが、女達の様子もおかしい。
少し怪我をしている女もいた。
俺が知らない内に何かあったのだろう。
「あんたには皆んな感謝してるんだ。きつかったら戻って来てくれよ」
と、男達が笑顔で俺を見送る。
その笑顔はべったりとして気持ち悪かった。
DQNに苛立って気付かなかったのか。
彼らもまた、狂ってしまっているのだ。
グシャグシャに潰れた紙は、元の様に広げても皺を消す事はできない。
それを元に戻すための設備はもうこの世界に無い。
カウンセリングも、投薬も、ゆっくりと時間を過ごす事も、全て不可能だ。
次は俺じゃなかった。
次は、彼らだ。
相手は7人。
俺が戦う所も少し見られている。
敵対は危険だ。
ここまでやっておいて、中途半端に俺は去る。
俺は一体何をやっていたんだろうか。
ただ死体を3つ積み上げただけで、何も変わらない。
全ての始末を付ける事もできない。
ただかき回して、逃げるだけだ。
でも、もうこれ以上何もできる気がしなかった。
力を合わせて生活する、なんて、やっぱり無理だった。
俺は弱い。幻想にすがって、他人の生活をめちゃくちゃにした。
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途中で雪が降る日があった。
こんな所で立ち往生か? と思ったが、その日だけだった。
それからしばらく晴れの日が続き、たまに雨が降った。
俺は北上を続けた。
今年中には無理だと思うが、まずは東北を目指す。
人気の無い山道なら車でも大丈夫だろうか?
自転車で日本一周した人間は、北に行くときどんな装備をしていたんだろう。
わからない事ばかりだが、進むしかない。
立ち止まったら後悔に引きずり込まれそうになる。
また孤独な生活に戻ったけれど、俺はとてもとても安心していた。
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