29 逃げ出すよ
29逃げ出すよ
空がまだ暗い内に起きた。
いつもこんなもんだ。
暗くなったらすぐ眠る様にしているので、睡眠時間は十分。くせになってしまったのか、2時間おきぐらいにふと目が覚めるけども。
死体処理場に集めてバッグに詰めておいたものを確認する。
あまり多いわけではない。
携帯食料、針金、タオル数枚、なんか細々したものがいくつか。
ナイフなどは無い。学校にある武器を持って出るのは気が引けた。
だいたい、包丁でゾンビと戦うなんて無謀だ。近距離では連中の方が強い。
いくつもサバイバル作品を読んだり観たりしていた。
作品の中では突然巻き込まれて無手の場合が多いけど、準備できる余裕がある場合は結構色んなものを準備していた。
あんなのは無理だ。
いざという時ゾンビと戦わなければならない。戦うなら荷物を下ろせばいいけど、襲われて逃げる方が多いだろう。
荷物が重すぎたら逃げられない。
ただの登山や山籠もりならそれでもいいかもしれないが、襲ってくる敵がいる。
いつ襲いかかられるか分からない。
なるべく軽くした。
武器は作った。パイプ槍。
竹槍のごとく先を斜めに切っただけだが、ドリルで幾つも穴を開けてある。
つまり出血目的の槍だ。
玉入れの籠を分解して作った。流石に運動会なんてするわけないだろうし。籠はそのままだし、槍に使ったポールは付け替えも効くし。世界が元に戻ったら買って返そう。
戻るんだろうか……
ナイフの類は外で揃えよう。
人が住んでいる避難所より、住んでいる人が居ない家から失敬した方がまだ精神衛生上よろしい。
俺はこれまでもかなり犯罪を犯しているけど、これから先もそうやって生きていくんだろう。
弓道場から弓矢を失敬しようとしたけど、既に無かった。
剣道場の竹刀もなかった。
皆とっていったんだな。取って外に出たのか、内でこっそり隠し持っているのか。
道具を失敬した技術室には色々あった。
やっぱり釘打機か? と思ったが、持ったら重かったのでやめた。
体に打っても効かないだろうし、これで頭を狙うとか俺には無理ゲー過ぎる。
銃弾のように内部が衝撃で破壊される効果も期待できないので、頭に打っても殺せないかもしれない。
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手頃な武器になりそうな物はほとんど残って無かった。
野球部の備品バットも、テニス部の備品ラケットさえ無い。
つまり、この避難所の中にはそれだけの武器がどこかに埋もれている。
何かのきっかけで殺し合いになるかもしれない。
さっさと逃げるべきだ。
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とりあえず死体を燃やした。
朝起きたら運び込まれていたので。
あいつらはこれから死体をどうするのだろうか。
もう知った事ではない。
哀れな女性の死体が燃えている。
その煙を背にして、俺は歩き出した。
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