19 避難所にて11
19避難所にて11
犯罪グループが手を組んだらどうしようかと思っていた。一つ一つは小さいが、手を組むとこの避難所を乗っ取る事ができるぐらいにはなるだろう。
合わせて20人ぐらいか? 管理員が40人か50人ぐらいだから、テキトーにボコれは言うこと聞くだろう。
日本人特有のものというわけでもないだろうけど、だいたい家族で集まったり友人グループを作っているので、管理そのものは楽だった。そういう仕組みを決めたわけじゃないのに、ちゃんと代表立てたりグループで活動しているし。
逆に、こうやって人数ではなく共同体数で管理しているから、脅して言うこと聞かせる手間も少ない。
俺はもう言うこと聞いてるみたいなもんだ。
俺自身は、犯罪者の仲間になったつもりはないが、死体遺棄、証拠隠滅の手伝いをしている。十分犯罪だ。
ここでは、確実に命が掛かっている。でも、昔、それか、この先社会が立ち直った時に「殺されそうだったから」の発言で許されるだろうか。「楽しそうにやっていた」という発言は確実にあるだろう。
後は週刊誌とかの後押しで有罪決定だろう。
社会的には、俺も犯罪者の仲間だ。
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可愛い女の子だったのかもしれない。
潰された顔では判断付かない。
焼却用の穴に、まだ生々しい全裸死体と、隅の方に転がっている首。
穴の底に溜まっている灰がところどころ付着している。
首を切ったせいで血まみれだった。
べっとりと半乾きの血液に灰が張り付いている。
それは石像の様にも見えた。
近くに置いてある。ポリタンクからガソリンを注ぎ、火を付けた。
以前はちゃんと倉庫に出し入れしていたけど、いつからだったか面倒になってやめた。
死体を焼くのにも慣れてしまった。
最初、死体を焼くことよりも、肉が焼ける臭いが普通だったのにショックを受けたが、今ではもうただの作業だ。
俺が首を落とさない分、まだ面倒は少ない。
いちいち首を落とさなくても心臓に穴開けるだけでもいいんだけど、やっぱり首を落とした方が安全だ。
燃やすから、中途半端にやって火達磨のまま起き上がられると周りの二次被害が危ない。
っていうか、俺しかいないけど。
そうだ。
死体遺棄どころじゃない。
俺が殺している。
保健室でもう無理だと判断された人は、鎮静剤を打たれる。
それから運ばれてきて、俺が首を落とす。
死ぬのが決まっているというだけで、死んでいない。
俺はずっと、人を殺し続けてきた。
俺はもう元の社会には戻れない。
法が許すかどうかは分からないが、人が許さないだろう。
あの暴力的なDQN同級生達でさえ、人殺しの俺とは距離を取りたがっている。
いつも殴ったり蹴ったりしていたくせに。
俺は、弱音を吐かない、表情もなんとなく笑っている様に見える、たまに鼻歌歌っている。
ああ、ダメだ。
俺、快楽殺人犯人じゃん……
立ち上る煙を見ながらぼんやり考え事をしていた。
ふと、騒がしい事に気付いた。
保健室裏側から入ったギリギリ校外の林の中、少し開けたところにこの処理場はある。
火事の危険とか、以前はもう少し気を使っていたはずなんだけど。今ではガソリン置きっぱなしだし。穴の中から上がった火の粉でガソリン燃えたら林燃えるかな。
ともかく、ここまで人の声が聞こえてくるなんて無かった事だ。
俺は鼓動が早くなるのを感じながら、でもあせらず、小走りで騒ぎの方へ向かった。
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