18 避難所にて10
18避難所にて10
当然と言えば当然だが、強姦殺人オッサン5人組だけじゃなかった。
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脱走宣言をしにきた人が帰る時、それをじっと見ている奴がいた。
だいたい予想していた。
リスクの少ない方法だ。
脱走すると言っていて、それを周りも知っていて、実際に脱走した人間を襲う。
どこに行ったか誰も知らない。
そいつは例のオッサン5人組ではなかった。
また別のグループなんだろう。
いるとは思ったが、実際に認識してしまうとため息が出た。
たかだか3000人も居ない程度の人間の中に、殺人や強姦をやる犯罪者グループがいる。
その割合は普通の平均よりはるかに高い。
食料は十分にある。
ならば、狙うのは何か。
快楽だ。
しかもそれは犯したり、殺したり、奪ったりする事で得られる方の。
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避難してきて1年と半年が過ぎただろうか。
もうカレンダーも見ていない。
ボロボロの全裸女性死体にも慣れてしまった。
会話が減っていた。
誰も話していない。
図書館から出してきた本を読んだり、窓際で日向ぼっこをしてうつらうつらとしている。
何かを小さな声でブツブツと言っている人達もいるが、少数派だ。放置しておく。
俺の元同級生も含め、犯罪者達の方がまだ状態は良い。
犯罪者は隔離施設に入れられている。
既に勾留期間も限界だし、ここは刑務所ではないから法的にどうかは分からない。
だが、去った警察官は連れて行ってくれなかった。
以前は武装した警備が居たが、今は居ない。警備自体が居ない。
隔離施設として使われている旧部活棟で彼らは生活している。近くにトレイ掘ったの俺だし。
彼らは日がな一日旧部室棟の周りで日に当たりながらゴロゴロしていたり談笑していたり筋トレしていたりする。
たまにどこか行くが、旧部室棟に帰ってくる。
食事の時間と夜は絶対いる。
というのも、この犯罪者隔離施設はかなり人口密度が低くて快適なのだ。
報復を受ける可能性があるせいでもあるが、避難民の中に戻りたいやつは居ない。
元々暴力的な言動が目立つ連中だったが、言動はそのままでも共同生活に慣れてきたらしい。
よくケンカしているが、口喧嘩ばかりで殴り合いまでになる事は珍しい。
元同級生達も、避難してきた頃の危うさはなくなっていた。
俺への恨み言も止まっている。
だが、俺が死体処理を引き受けているという事を知り、犯罪者連中は俺を嫌がる様になった。誰がトイレ掘ってやったと思ってんだ。
犯罪を犯してここに隔離されたのに、ここから死体処理へと運ばれる人間はまだ居ない。
そして、頭が本当にぶっ壊れている方の犯罪者達はここにいない。
連中はむしろ人口過密の避難民の中が楽しいのだろう。「獲物がいっぱいいる」って。
避難民達は言葉数も少なくなり、そろそろ限界にきていた。
1年半も共同生活をしていたから、慣れはあるのだが、ストレスが溜まる速度の方が早いらしい。
俺はといえば…… どうなんだろう。
前より乾いていると思うが、あまり変わった感じはしない。自分では。
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