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10 避難所にて2

10避難所にて2

 

 ゾンビ病が日本で流行りだしたのは、丁度受験シーズンだった。

 それでも各校の受験が通常通り行われたのはさすが日本と言うべきか。

 ソレ以前から海外でゾンビ病が話題になっていた。

 なんでも製薬会社の株価が上がったとか下がったとか。

 

 もちろん俺はゾンビ扱いされた。

 酷くは無かったがイジメられっこだったし。

 

 合格し、これから新生活! という春休み中にあれよあれよと事態は進み、国民皆検査が行われた。

 不思議な事に、うちの家族では俺だけが感染していた。

 3人とも心配してくれたが、まぁ、しょうがない。

 慌ただしさはあったものの、その時はまだそこまで事態は深刻化していなかった。

 今までも人類は様々な感染症で大打撃を受けたが、それで人類全てが滅んだ事はない。

 それにこのゾンビ化は、大怪我しなければ大丈夫なのだ。普通に生活できる。

 発症すれば周りの人を襲うという特異性から感染者と非感染者を分けているだけで、別に大した問題があるわけじゃない。

 

 俺はそう思っていた。

 

 

 ■

 

 

 そのDQN連中は俺を見つけ、駆け寄ってきた。

 笑顔で腹パン。

 丁寧に全員だ。

 お陰で吐きそうになった。

 それぞれ少し顔がやつれていて笑顔が狂人の様に見えた。実際そうだったわけだけど。

 

 それからしょっちゅう俺に絡んできた。

 管理員をやっていたから、よくわからん要求を言ってくる。

 酒が、タバコが、もっと食い物よこせとか。

 まず、酒もタバコも禁止されている。

 ゾンビ虫が何を大怪我と判断するか分からないというのもあるが、こういう場所でそんなものを配るわけがない。

 ただでさえ人が多くて空気が悪くなっているのに。

 持ち込んでいる人達はいるが、配給品には無い。

 そもそも食料の管理は別の担当だ。俺じゃない。

 だいたい、未成年だろ。

 

 しかし、連中は俺に突っ掛かってくる。

 俺の担当じゃないと言っているのに、じゃあ俺から担当に言えとか、盗んで来いとか、アホな事を抜かす。

 知り合いが俺しか居ないから俺に突っ掛かっている。

 他の管理員や警官、自衛官に突っかかる程の気概は無い。

 自分にとって一番楽な方法で最大の効果を得るというのは策として良いものかもしれないが、こいつらは出来ないことができると思っている。

 俺が少しパシリをやったりしたのがまずかったんだろうか。だいぶ馬鹿になってしまっていた。

 こいつらは進学組では無かったはずだが、就職先は見つかっていたのだろうか。

 

 避難所ではあまり一人になることが無いし、人の目もあるので、よく絡まれはするものの、特にこれと言って大変な目に遭うことも無かった。

 警官が気を使って、俺の部屋を連中の区画から遠くに変えてくれたし、何かあったら通報する様にと言ってくれた(通報という表現に少し笑った)

 初日こそだいぶ腹パンを食らったが、後はちょっとケツを蹴られる程度だ。

 別に警官の手を煩わせる程ではないと思った。

 因縁のあるような人達は引き離しておく。

 警察官達は普段からそうやって避難所の人々が諍いを起こさないように配慮してくれていた。

 しかし、それがどうも連中には『俺が警官に守ってもらっている』『俺が警官に媚を売っている』と見えたらしい。実際そう言われた。

 俺が警察官に物資を横流ししてかばってもらっているという噂まで流し始めた。

 同じ年代の男子女子には流行っていた様だ。だが、信じているヤツは居なかった。娯楽に飢えているだけだ。

 

 思えばこの時から、もうおかしかった。

 あのDQN連中はもっと単純な馬鹿だった。

 こんな陰湿さは無かったはずだ。

 

 今までが結構自由に生きてきたのかもしれない。ストレス状態に弱かったのかも。

 

 しばらくして、暴行事件が起こった。

 喧嘩だ。俺がこっちに来たときからよくあった。主におっさん連中がやらかしていたのだが、とうとうあのDQN連中が他の避難者の中学生男子2人をボコボコにして警官に捕まった。

 理由はムカついたからとかなんとか。

 これは俺にとってかなりの衝撃だった。

 これまでの暴行犯は、アルコールで脳細胞が溶けたんじゃないかというおっさんが主だった。

 見るからにイライラしているというか、言動から既に乱暴で、野蛮というか、蛮族というか。

 しかし、元同級生のDQN連中はまだその域に達していなかったはずだ。

 こんな閉鎖的な場所で見ず知らずの相手を捕まえてボコるほどの度胸は無かったはず。

 

 拘束、隔離されたDQN連中は俺を逆恨みした。

 俺が警官とつながっているからこんな扱いを受けていると思ったらしい。

 もちろんそんな事は無く、今までの暴行犯も同じように隔離していた。

 だがそんな説明聞く連中ではない。

 俺の恨みつらみを叫んで暴れていた。

 

 ○

 

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