6.魔王の娘は頭がいいのです!
果たして今まで異世界生活をしていたマリアが学校の授業についていけるのだろうか?
まあ俺は正直ついていけてない。しかし彼女にとってはすべてが目新しいものであり、俺よりも勉強は苦労することだろう。──そう思ってた朝が俺にもありました。
☆
「えーっと、この英語を、マリアさん訳してください」
「はい! ジョンはニートで税金を納めていません。だから彼はみんなからゴミムシと呼ばれています。です」
「はい。ありがとう! 完璧ですね」
なんと不憫な文章なんだ。
今はそれは置いといて、こんだけスラスラと英語を和訳するマリアに俺は驚いていた。
次の授業の数学、その次の古典でも彼女は遺憾なく実力を発揮していた。
「すごいねぇ! マリアちゃん。そういえば自己紹介まだしてなかったね。私は佐山咲葉。シドの幼馴染で高校生探偵だよ」
「シド? 高校生探偵?」
「おい、咲葉。意味の分からんこと言ってんじゃねえよ。こいつは俺の幼馴染で、シドは俺のあだ名だ」
「そうでしたか! マリア=サタミニアです。よろしくお願いします」
「ところでマリアはなんでそんなに勉強できるんだ?」
もしや異世界式の秘密の勉強法があり、俺もそれを実践すれば頭が良くなるかもしれない。そんな淡い期待を込めてマリアに聞いた。
「んーこちらに来る前に勉強したからですかね? この世界は面白いので自然と本を読み漁ってました」
「た、ただの努力家か……」
「なんでシドががっかりしてんの? それよりマリアちゃんとシドはいつ、どこで知り合ったの?」
いつ、どこで知り合ったと聞かれても今日の朝なんだが。
しかも許嫁という状況のため、なんと言えばいいか分からず俺は答えに迷っていた。
「生まれた時からですよ。小さい時はよく遊んでました。一緒にお風呂も入りましたし、モンスターを狩ったりと──」
「モ、モンスターを狩るゲームをしてたんだよ! いやードラゴンが強くてな。あはは」
「いえいえ、獅童くんは一撃で倒してましたよ?」
「ちょ、ちょっと咲葉、たんま!」
くそっ! 察してくれ。
異世界うんぬんなんてみんなに知られたら面倒くさくなるだろう。
てか昔の俺はドラゴンを一撃で倒すほどやばいガキだったのかよ。全く記憶にないぞ。
俺はマリアの手を取り、教室を出ると人気のない図書室前に移動した。
「ど、どうしたんです? 獅童くん」
「いいか、サタンさんになんて言われてるか分からんが学校で異世界とか魔王の娘とか俺が勇者の息子とか許嫁とかそうゆうのは禁止だ」
「とかとか? 禁止ですか?」
「ああ、みんなに知られたら面倒くさいだろ?」
「んーでも許嫁ってのは私的には知ってもらいたいかと」
「いや、ダメだ。とにかく普通に過ごしてくれ。約束だ」
「まあ、獅童くんがそう言うのならそうします」
理解の早い子で助かった。
これなら一安心だ。
俺は教室に戻ろうと踵を返した時、
「獅童くん。約束する時はハグするんですよ?」
「はぁ? そんなこと──」
マリアは俺の背中に手を回し、ギュッと優しく抱きしめた。
制服越しに伝わる大きく、柔らかい胸の感触が俺の思考を一瞬にして停止させた。
「獅童くんの心臓の音が聞こえます。ドクッ、ドクッって。ちょっと早くなってますかぁ?」
「おお、おい。何を言ってんだ。授業始まるから戻るぞ」
こ、小悪魔だ。いや魔王か。
こんなあざとく童貞心をくすぐりやがって。
俺はなけなしの理性を振り絞ってマリアを体なら離すと教室へと戻った。
「2人してどこ行ってたの? それに──」
と咲葉が聞きかけた所で授業開始のチャイムが鳴った。
いつも笑顔を絶やさない彼女だがなぜかこの時の表情は暗かった。