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30.傀儡師の都にて事件は起こる?

 ──ルーゼン共和国

 ラルフド王国に次ぐこの世界第二の大国で、通称、傀儡師の都と呼ばれている。──らしい。

 魔術の基礎となる術式を発明した国でもあり、初代の大魔導師もこの国から誕生した。

 そんな魔法大国であるルーゼン共和国だが、魔術師のレベルはラルフド王国に負けている。

 キリカの話によると術式の応用力で大きく差がついたらしい。


 つい数十年前までは両国のレベルは均衡状況だったが、人間以外の多種多様な種族をいち早く受け入れたラルフド王国はその結果、様々な魔術を取り入れて多くの独自術式を完成させていった。

 無論優秀な魔術師が多くいたことも要因で、俺の母さんである聖メイナの活躍も大きかったようだ。


 そこで大きく遅れを取ったルーゼン共和国は独自の得意分野を作り上げたいとのことで魔術を用いて人形を操る傀儡師の育成に励んだ。

 その結果多くの著名な傀儡師を排出して傀儡師の都と呼ばれるようになったようだ。


 馬車に揺られること6時間。

 俺とキリカはルーゼン共和国の首都、バンベースに到着した。

 色鮮やかな木造住宅が立ち並び、少し遠くに目をやると王冠を被った巨大な石像が見える。

 

「なんか第二の大国なのにラルフド王国より発展してないか?」


「外面はそう見えるかもね。この国は派手好きで有名なのよ」

 

「へぇー。それで民家の色も赤やら緑やらと結構派手なんだな。面白い国だな」


「単に見栄を張ってるだけよ。ラルフド王国に負けてないぞってね」

 

「見栄っ張りが派手なのを好むのはこの世界でも変わらないんだな」


「そりゃこっちの世界も獅童の世界も感性ってのは、みんなほとんど同じだからね」


「キリカも恥ずかしがり屋だしな」


「そ、それは関係ないって! もうっ!」


 風船のように口を膨らましたキリカ。

 そんな彼女と一緒に俺は舗装された石畳の道を進んだ。

 目指すは西にある魔法学校。

 この国もラルフド王国同様に治安は安定していてるらしく、平穏で楽しそうに暮らす人々の姿がたくさん見受けられる。


 途中、休憩がてら俺達は喫茶店に入った。

 幾何学模様の壁紙が目を引くゴシック調の店内に入るとゴスロリな服に身を包んだ店員が出迎えた。

 席へと案内されるとキリカオススメのイチゴ牛乳に似た品を頼む。


「あのメイドさんこっちを全然見向きもしなかったけど俺達歓迎されてないのか?」


「そんな事ないわよ。あれは傀儡師が使う人形で、この世界ではパペットイって言うの。魔力がある者なら簡単に使えるように術式が予め組み込まれてるわ」


「へぇー便利なもんだな。ならキリカも傀儡師の術は使えたりするのか?」


「もちろん! 使えるわよ。こんなのサクサク動かせちゃうんだから」


「じゃあ後で機会があったらやってみてくれよ」


「えっ!? うん、まあ、い、いいわよ。機会があったら……ね」


 箒の時と同様に歯切れ悪く答えたキリカ。

 これは期待できなさそうである。やってもらうのはやめておこう。

 

「キリカはさ、なんで魔術師になろうと思ったんだ?」


「いきなりな質問ね。才能ないとでも言いたいの?」


「いや、別にそうゆうわけじゃないけどさ……。あはは」


 キリカは出されたイチゴ牛乳に似た飲み物をスプーンでかき混ぜながら俯き加減で話し出した。


「私のママ、お母さんってサキュバス族の中でも魔術に関してはかなり優秀だったの。軽蔑されるサキュバス族の地位向上にも貢献してたわ。そんな自慢のお母さんだったんだけど突然赤の魔術集団に襲われて死んじゃったんだ」


「許嫁を約束したお母さんか」


「うん。それで私はその赤の魔術集団に出会うために魔術師になったの。情報を得ることもできるし、魔術でそいつらを倒すこともできるかもしれないから」


 思っていたよりも重すぎる話に俺は口を噤んだ。

 なんて言えばいいのかまったくわからなかったからだ。


「なに獅童が深刻そうな顔してんのよ。別に気にしなくていいわよ」


「いや、なんかその、変なこと聞いて悪かったな」


「じゃあお詫びに官能小説の朗読、また一緒に付き合ってよね!」


「ん、ああ、わかったよ」


 喫茶店を出ると俺達は再び魔術学校を目指して歩きだした。

 小さな十字路に差し掛かった時、


「あ、赤いの……」


 そうボソリと呟いて、キリカは進むべき道とはまったく違う方向に箒を持って駆け出して行った。


「おいっ! キリカ待てよ!」


 もうすでに箒で飛び立った後なのだろうか、どこを探してもキリカの姿は見当たらなかった。

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