表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/31

24.修羅場に弱い俺はなにもすることができませんでした

「お、お前らどうしたんだ?」


「獅童くん。咲葉ちゃんに小さい時、プロポーズしてたって本当ですか?」


「あ、あ──」


「マリリン本当だよ! 保育園の年長の時にシドから、この髪留めと一緒に結婚しよって言われたの」


 咲葉は俺の言葉を遮って強い口調で言った。

 修羅場を感じさせるこの状況。

 俺は何も言うことができずに、ただただ佇んでいた。


「そ、そうですか。獅童くんはそのことを覚えているのですか?」


「いや、プロポーズをしたことは思い出したんだけど、誰だかは正確には思い出せてなくて昨日咲葉に言われて初めて知ったんだ」


「じゃあ、プロポーズをした人がもう一人いるとしたら獅童くんはどうしますか?」


 なっ、もう一人プロポーズをした人がいるだと……。

 そうだとしたら俺はどうするんだ?

 どうしたいと思うんだろう。


「すまない。分からない」


「私も、私も小さい時に獅童くんにプロポーズされたんです。そこでこの星型の髪飾りをもらいました」


「ほ、本当なのか!?」


 まさか俺はマリアにもプロポーズをしていたとは……。

 記憶がないとはいえ当時の俺はなんてことをしていたんだ。


「うっ、嘘だ! そんなの嘘だ! シドは私だけに……私だけにしてくれたんだっ!」


 咲葉は体を震わせながら俯き、両拳を強く握りしめて叫んだ。

 そんな咲葉に対抗するようにマリアも声を張り上げる。

 

「咲葉ちゃん。私は獅童くんが咲葉ちゃんのことを好きでも構わないと思っています。私の()()()()では一夫多妻と言うのは特別不思議なことではないので……。でも私は許嫁として獅童くんのお嫁さんになることだけは絶対に諦めたくないんです! 私も咲葉ちゃんが獅童くんを想うように、いやそれ以上に獅童くんのことが好きなんですっ!」


「わかんない、マリリンの言ってること全然わかんないよっ! ……くっ」


 咲葉は泣いた声音で言うと涙を拭いながら走り出した。


「さ、咲葉! し、シド追いかけなくていいの!?」


 晴人は俺のジャージを引っ張り必死の形相で伝えたが、俺はそれに応えることもできずにただ真っ暗な地面を見つめていた。

 


 どれくらいぼーっとしていただろうか。

 その後、俺は宿舎に戻ると周りを遮断するように早々に布団に入った。


 

──林間学校最終日。


 咲葉はどうやら体調を悪くしたとのことで最終日にある陶芸体験には参加しなかった。 

 これは俺にとっては幸いで、正直今はどんな顔して会えばいいのか分からない。

 マリアと晴人も元気はなく、俺たち3人は一言も会話をすることもなく林間学校を終えたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ