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19.林間学校初日は幼馴染のターンですっ!

 ──林間学校1日目。

 生徒たちは朝早くからワクワクした気持ちを抱え、学校に集合すると、迎えに来た観光バスに乗り込んだ。

 車内はみんなハイテンションを極めた雰囲気で、居眠りする間もなく騒がしい。

 

「シド、シド! 鮭とば食べる? なんとっ! 北海道産だよっ!」


「別に産地にそんなに興味ねーよ。けど、1つもらうわ」


 バスの席は班ごとに決められ俺はいつも以上にハイテンションな咲葉の隣に座っている。

 鮭とばって親父が酒飲みながら食べるもんだと思ってたが、普通に食べてもうまいな。

 

「どうどう? うまいでしょ? あっ、これチョコレートだけど食べる? なんとっ! 咲葉産だよっ!」


「鮭とばの後にチョコかよ。てか咲葉産ってなんだよ?」


「も、もう、シドは察しが悪いなぁ。手作りって事だよっ……」


 なんだよ急に塩らしくしやがって。

 そうならそうと早く言って欲しいものだ。


「んじゃ、もらうわ」


 横から咲葉の熱い視線を感じながら俺はチョコレートを食べた。

 

「ど、どうだっ?」


「まあ、うまいじゃないか。いつもバレンタインデーでもらってる義理チョコと同じ味だ」


「義理じゃないんだけどな……」


「ん? なんか言ったか?」


「な、なんでもないよっ! それよりシド! 今夜は寝かさないぞっ! 朝まで大富豪大会だっ」


「いや、部屋は男女別々だからな。この前、班決めくじ引きの後に決めただろ」


「そうだったけ? これは教師の陰謀だ!」


 まったくもって健全な教師の陰謀ですね。

 だいたいこいつは男子と同じ部屋でも大丈夫だっていうのか。

 ふと視線を斜め横に移すと晴人が笑顔で手を振っていた。

 その前にはこちらを羨ましそうに見ながらほっぺたを膨らましているマリアが、ちょこんと座席から顔を出している。

 俺は苦笑いを浮かべて手を振り返していると咲葉に服を引っ張られた。

  

「見て見てシド。森だよ森!」


「ああ、森だな」


「尻尾の生えたメイド服姿の幼女が森を駆け抜けてるよっ!」


「ああ、尻尾の生えたメイド服姿の幼女がっ──」


 窓の外を見るとバスに並走して走る幼女の姿があった。

 あれは……吉田だ……。

 なんであいつが付いて来てんだよ!

 なんとか咲葉の気を逸らさなければ。


「おいっ、咲葉。お前疲れてるんじゃないか? そんなもの俺には見えないぞ。こんな時はババ抜きだ。さあやろうぜ!」


「いや、それより幼女──」


「おいおい、俺に負けるのが怖いのかよ! そうだ負けた方がなんでも言う事聞くってどうだ、なっ! やろうぜ」


「な、なんか必死だね、シド。まあいいっか! 2人だけの真剣勝負だっ! さっき言った事忘れるんじゃないぞ」


 こうして俺は咲葉と2人だけでババ抜きをする事になった。



「むむっ! こっちだぁ!」


「ちっ……負けた」


「じゃあ、なんでも言う事聞いてもらおうじゃないか」


「で、何を聞けばいいんだ?」


 咲葉は人差し指を口にかざすと小首を傾げながら微笑んで、


「今はひ・み・つだぞっ」


 そう言って小首を傾げながら微笑んだ。

 幼馴染が見せた不意なあざとい仕草に俺はドキドキしながら視線を逸らして後ろ頭を掻いた。


 その後、林間学校の宿泊施設に到着して荷物を部屋に置き、学校指定のダサい水色のジャージに着替えると俺たちはキャンプ場へと向かった。

   

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