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13.アーキハーバラー

 夢の街秋葉原。

 初めて来るものにとってこの街の景色、雰囲気は本当に独特なものに感じる。

 見渡す限りに設置された看板には美少女、美少女、美青年、美少女一つ飛ばしてまた美少女……のアニメやラノベのキャラクターが描かれている。


 特別そんなに興味のない俺にとってはガヤガヤとしたちょっと変わった街にしか見えないが、この文化を愛する者からするとこの街事態がパラダイスでテーマパークみたいなものなのだろう。

 その証拠にマリアは秋葉原駅に降りた瞬間から目を輝かせ、食い入るようにポスターや看板を見ている。


「獅童くん! このキャラ凄くかわいいんですよぉ! “小悪魔堕天使みさきちゃん”ってキャラなんですけどね──」


 小悪魔なのか堕天使なのか実にはっきりしてほしい名前のキャラだな。

 それにしても出会って数日しか経ってないがマリアには色んな一面がある。

 廊下でハグしてと大体なことを言うかと思えば、許嫁とバラしてしまい素直に謝ったり、子供のように無邪気にはしゃいだりと根は真面目で良い子そうなのだが、正直俺には彼女がまだよく分からない。

 

「なあ、マリアって本当に俺と許嫁で嫌じゃないのか?」


「い、いきなりどうしたんですか? それは、その私は……」


 頬を赤く染め、体をもじもじさせて言い淀むマリア。

 最初に出会った時もそうだったが、どうやらこちらからの直球的な質問には弱いらしい。

 彼女はデニムのスカートをグシャっと握り締めると、


「私は嫌じゃありませんよっ! お父さんが決めたこととか関係なく、獅童くんといつまでも一緒にいたいと思ってます」


 こうはっきりと言われてしまっては何か言葉を返さなければいけないが、マリアのことを好きでもない状態で浮かんでくる言葉はない。

 

「マリア、俺はまだ……」


「わかってますよ、獅童くん。ゆっくりでいいんです。昔の記憶が戻ってから決めてもらえれば」


 少し俯いてそう言ったマリアはゆっくりと歩きだすと、途中こちらを振り返り、


「獅童くん! 早く! 今は楽しみましょ?」


 明るく笑顔で俺に手を差し伸べた。 

 


 休日の秋葉原は人が多い。

 信号待ちともなると次から次に並びが増えていき交差点はごった返す。

  

 そんな中、俺達は今アニメショップに向かって歩いていたはずがなぜか異世界喫茶に来ている。

 路上に蔓延る客引きに無理やり強引に勧められ、断るのも可哀想だとマリアに説得されて来る羽目になってしまった。


 冒険者をコンセプトとした店内は仰々しい様々な武器が置かれ、木目の床には魔法陣が描かれている。


「勇者様、おかえりなさいませ! 冒険の書はお持ちですか?」


「ぼ、冒険の書?」


「はい! 当ギルドハウスに入られる度にスタンプを押していき10個たまると宝箱が貰えるものです」


 ただのスタンプカードじゃねーか。

 それにしても意外と店内には人がいる。俺、こうゆうとこ入るのちょっと恥ずかしいんだけど……。

 

「冒険の書是非作りたいです! 作れますか? あっ、それすごくかわいい服ですね! 魔導師ですか? 私も着てみたかったんですよ!」

 

 ノリノリじゃないですかマリアさん。

 異世界出身の彼女でもこうゆうものは楽しめるのか。


「獅童くんはもちろん勇者の服来ますよね!?」


「お、おぅっ」


 そう返事をすると店員に白衣(しろぎぬ)と鎧を渡され更衣室で着替えることになった。

 勇者って本当にこんな格好してるのかよ?

 もし親父がこの姿で歩いてたら絶対に俺は石を投げつけているだろう。


 そんなことを思いながら着替え終えるとマリアの待つテーブルに戻った。


「わぁ! 獅童くん似合ってますよ! さすが勇者の息子ですぅ」


「そ、そうか? 自分では到底似合ってると思わないんだが……。マリアの服はなんかその、すごいな」


「魔導師の服がなかったらしく、魔王の服になってしまいました。残念です。」


 黒いマントに大袈裟な肩パットのついた魔王のコスプレはかわいい女の子のマリアには全く似合っていなかった。

 

「私、魔王の娘なのにこうゆう格好全然似合わないんですよね」


「いや、似合わないほうがいいだろ。いつもはどんな格好してたんだ?」


「大体ドレスが多いですかね。お父さんに連れられてパーティーとか参加することが多かったので……。だから自由に服を着れる今はすごく嬉しいです」


 魔王の娘もいろいろ大変なんだな。勇者の息子として、いろいろ知らずに育った俺は良かったのか、悪かったのか。

 今はまだ皆目検討がつかない。

 俺とマリアはジュースを頼むと会計を済ませ異世界喫茶を出た。

 この後、大変なことが起こるとも知らずに。

 

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