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11.吉田ちゃんはストリートファイター

 飯を食べ終わるとなぜか俺は桃奈に自室に追いやられ、仕方なくゲームをすることにした。

 しばらく独りでゲームをしていると暇になって家をうろついていたのであろう吉田がドアを開けて入ってきた。


「むむっ、ここは貴様の城か? 隠れてコソコソ何をしているダニ」


「いきなり部屋に入って来るなりなんだよ。隠れても、コソコソもしてねーよ。ゲームしてるんだ」


「げ、ゲーム? それはなんダニか?」


「異世界にはゲームないのか?」


「あるのかもしれないし、ないのかもしれないダニ。姫様はそうゆうのやらないし、吉田はあまり遊びと言うものをしたことがないのダニ」


「そうなんだ。やってみるか?」


「いいダニか? 貴様と吉田は敵同士、宿命付けられたマナが因果の時を──」


「それはお前が勝手に思ってることだろ。とりあえずやってみろよ」


 そう言って俺は吉田と格闘ゲームをすることになった。

 初めて触るゲームに吉田は興味津々で子供のように目を輝かせていた。いやこいつ子供か。


 ──うわっ、うわっ、うわっー K.O! YOUWIN!


「も、もう一回やるダニ! 次は負けないダニ」


 画面を食い入るように見つめ、覚えたてのコマンドを押していく吉田。

 完全にゲームのキャラと同期しているようで、『いてっ』とか『ぐわっ』とかダメージを受けるたびにうるさい。

 

「まだダニ! 勝つまでやるダニ! 諦めたらそこでストリートファイター終了だに」


 こいつはすでに立派なストリートファイターに成長していたらしい。

 しかしまあこうも楽しんでゲームをしている姿を見ると不思議なことに付き合ってあげたくなってしまう。

 途中マリアと桃奈がやってきたが楽しんでいる俺たちを見て気を使ってくれたのか、そっとドアを閉めて戻っていった。

 こうして俺と吉田の戦いは深夜の3時まで続いた。



 重い、苦しい、なんか……生暖かい。

 目を覚ました俺は目の前の可愛らしい犬のキャラクターのついた純白のパンツをしばし黙って眺めていた。


「んんっ、ひめさま〜眠いダニ」


 寝てるのに眠いとはなんだこいつ。しかもパンツ一丁だ。

 てかこの体制はまずい。うつ伏せでのしかかった吉田の股間が俺の顔の前にあって、俺の股間が吉田の顔の前にある。

 こんな時に起きられてしまっては大惨事を間逃れることはできない。

 吉田、眠いのなら起きるんじゃないダニよ。

 そーっと彼女の足をどけようとした時、 

 

「んっ、吉田は起きてるダニよ!」


 俺の額に大粒の冷え汗が流れた。

 しかしどうやら寝言のようでホッとため息をつくと再び足を動かした。

 あとちょっと、あとちょっとだ。


 慎重にズラしていると吉田のふわふわした大きな尻尾が俺の鼻を無邪気にくすぐった。

  

 ──はっくしょん!


 終わった。

 きっと吉田のことだから変態ロリコン野郎とか散々な事を言われるのだろう。

 変態ロリコン野郎だとしても俺は紳士的に行動した。

 だから紳士的変態ロリコン野郎にしてほしいものだ。


 そんなことを考え頭を掻いたが、吉田はまだ寝ているようで騒ぎ立てる様子はない。


 助かった。よし、このまま……。


「獅童! 早く学校行かないと遅刻するよ。昨日何時までゲーム──」


「これは違うんだ、紳士的にだな、いや違う」


「紳士的? 何がよ! 変態ロリコン野郎!」


 この後、桃奈は吉田を抱え上げると俺に10回もの強烈な蹴りを入れて部屋を出ていった。

 そして数日間俺は願い通り紳士的変態ロリコン野郎と桃奈に罵られたのだった。

 

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