第三十八話 『三十八』
ずっと目指していたものがあった。そのためにいくつもの物語を書き殴った。全てが訳の分からぬ短編だった。僕はとにかく書いていたかった。書いている間は自分がその物語の登場人物として居るように感じた。だけど、現実はいつだって付き纏うのだ。パソコンに物語を打ち込んでいる僕の背後に潜んでいるのだ。いつも聞こえてくる、世界の声が。イヤホンを付けて音楽を聴いていても、それは聞こえてくる。脳のなか、全部取り出したかった。そうすれば、いくらか気が楽になるのかもしれない。
僕は何度も何度も自分を殺そうとした。現実ではなく、物語の上で。だが、いつだってあいつは生きていた。ここにいる僕が死なない限り、生き続けるのだろう。僕は自殺を考えた。今度は物語ではなく、現実で。だが、インターネットで調べても良い方法はどこにも見当たらなかった。僕の居場所がないように。
苦しい、苦しいと嘆いたところで「それは思春期特有の甘えだ」と言うだろう。確かにそうなのかもしれない。働き出したら、そんなことなんてどうでもよくなるのかもしれない。あのときは何て馬鹿なことを考えていたんだろう、とか思うのだろう。だが、それはいつかの話だ。僕はその思春期特有の今の時代に生きているんだ。大人に言われたから、今の自分を否定しよう、とは思わない。いや、思えない。
果たして、僕は夢を叶えることができるのだろうか?もしも、土のなかにいるのだとしたら、叶えられることができるのかもしれない。残念ながら、僕は土のなかに入っていない。いや、入っているのかな。どちらにせよ、未だに僕は叶えていない。今も何色にもなり得ていない。いつの日か、輝かしい色を手に入れるために書き続けていよう。
……僕はわざわざここに出る必要性はどこにでもなかったかもしれない。それでも、訳の分からないものに意味を付けたかった。




